scene.4

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「ねぇ」 「なんだ」 私は心の動揺を隠すように、唐突に話し始めた。 「なんで皆に自己紹介させてくれなかったの?」 名前を言おうとした途端、斎がそれを遮った。 斎には、あるまじき行為だ。 幼馴染の私に対しては何気に失礼なことを言ったりしても、斎は基本的に礼儀正しい。 自分の仲間に向かって名乗ろうとしている私を、遮る理由はない、はず。 「私は斎からいつも聞いてるから、皆のこと知ってるけどさ。皆は私のこと、わからないでしょ」 「幼馴染だということはわかったんだからいい」 「なにそれ!」 いつもと違い、理屈の通らないことを言う斎に、私は首を捻った。 「紹介したくないくらい、恥ずかしいとか?」 だとしたら、かなり凹むんですが。 「違う」 「じゃ、なんでよ」 「…」 黙りこくる斎。こうすれば、私が追究を止めるということは経験済みなのだ。 言いたくないことは、言わない。私もそれを尊重して聞かない。それがいつもの私達だ。 でも、今日はそうはいかない。 楽しそうに仲間のことを語る斎。 そんな斎を見て、私はいつも羨ましかった。そして、皆に会ってみたいと思った。 そして、この間やっと、離れたところからではあったけれど、皆の姿を見ることができた。 そして──今日、思いがけず皆に直接会えた。 だから、ちゃんと自己紹介したかったのだ。 仲間に入ることはできなくても、斎を通しての友達になれたら嬉しいなと思って。 それなのに。 とことん追究する気で、私は斎をグイと見上げた。 すると斎は、少し困ったような顔をする。 「いやに食い下がるな」 「今日は許してあげない」 「…そんなに自己紹介したかったのか?」 「そうだよ。斎が大切にしてる仲間にずっと会ってみたいと思ってて、せっかく会えたのに」 そう言って、少し俯く。 すると、斎はクシャクシャと私の髪を撫でた。
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