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下士官と少女がいると思われる場所から鋭い視線を逸らさぬまま、バスンと音を立てて地面を踏みしめながら嵐山。
陸攻夫婦と健が真剣な表情で見守る中、1人の少女がたまりかねて声を上げる。
「…もう許してあげて下さい摩耶長。
元々は私がみんなの、ううん、健君の気を引きたくてあんな嘘をついたのが悪いんです」
直子はいつしか泣き顔である。
但し先程迄とは異なり、それは幽霊に対する恐怖心に拠るものではなかった。
「………」
如何なる理由からか嵐山が直子の言葉に応えない中、直子は更に言葉を続ける。
「お願いします摩耶長。
幽霊さん達だけが悪い訳じゃないんです。
もう許してあげて下さい。
元々は私が嘘なんかついたから…」
涙声で懸命に訴える直子。
すると嵐山、ふと表情を緩めつつ口を開く。
「…直子ちゃんはそれでええんか?
ゆきちゃん確か…」
「はい。
一度幽霊が見えるようになった人を、再び幽霊が見えないように出来る方法はないんです」
首を縦に振りながらゆき。
とうに分かっているのだ。
相手が少女と知っても尚、嵐山がきつい言葉で詰め寄ったその理由を。
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