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「心、彼方、はい召し上がれ」
母はいつも、同じもようの皿に、同じ食事を、同じ量だけ盛り付けて、私達の前にそれぞれ並べた。
父と母とは、大皿から自由に好きなだけを取って食べているのに、
私達の食事は、必ず個別に同じものが用意されていた。
「心も彼方もちゃんと残さずに食べるのよ」
母は私達に同じ服を着せるのも好きだった。
髪型も同じ、髪のリボンも必ずお揃いのものを結んだ。
「んー! 心も彼方も可愛い! 食べちゃいたい!」
何の疑問も抱かずに同じ格好をして、同じものを食べ、同じことをしていた、幸せな時期が終わる頃。
私は母に尋ねた。
「お母さんは、私達がそっくりだから好きなの?」
「あら、逆よ」
母は笑って答えた。
「見かけをそっくりにすればするほど、心と彼方の違うところが見えるんですもの。
それを知るのが楽しいの」
双子でも心は心、彼方は彼方だと、
父も母も言い。
きちんと区別されて育った、
そんな、小さな頃。
私達がその後まったく別々の道を歩くことになるのは、
思えば、
必然だったのかもしれない。
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