左右非対称の貝殻

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田舎の一学年一クラスしかない小学校で、 私達は、進級しても変わりばえしない級友達と、六年間を過ごした。 四六時中一緒にいれば、次第に区別がつくようになるものらしく、 『瓜二つ』と言われた低学年を過ぎて、四年生になる頃には、級友達も私達を取り違えることはなくなっていた。 そしてその頃から、私達の違いはなおさら明確になっていった。 何にでも積極的で、活発に動き回り外から情報を仕入れて来る、心。 引っ込み思案で本ばかり読み、内で知識だけの頭でっかちになっている、私。 小学校の校区三つが合わさる、大きな中学校に進学してからは、二人でいることは極端に減り、 心は長かった髪をバッサリと切って、 お互いにお揃いの服を着ることもなくなった。 心は土日もほとんど家には居なくて、部活だ遊びだと飛び回り、 一方で私は、本を読むか絵を描くかで、部屋で一人で過ごすことがほとんどだった。 私はいつも、心の行動力が羨ましかった。 同じ遺伝子を持って生まれて来たのに、 同じ家で同じように生活して来たのに、 なぜこうも違うのだろう。 大勢の友人に囲まれて、笑ったり泣いたりしている、素直な心。 挑戦して、いつも失敗して、それでもくじけずにまた挑戦する、 危なっかしいけど前向きな心。 父も母も、ハラハラしながらそんな心を見守っている。 いつも大人しく本を読んでいる私に向けるより、よほどたくさんの注意を色んな人から向けてもらえる心に、 私は嫉妬さえしていた。 そして、 そんな自分が嫌いだった。
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