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夜、ほうほうと鳥が鳴いている声が聞こえた。ニーナは痛む頭を抱えて、体を動かす。だが両手両足共に縛られていて、びくともしなかった。
――あたし、なにしてたっけ……。
ハッと気付いて、ニーナは辺りを見回す。ここはどこだろう? 小さな小屋、カビの臭いがして、空気はじめりとしている。
叫ぼうとしても、猿ぐつわがそれをよしとしない。
月が雲に覆われて、小屋の中は真っ暗になる。恐怖に身じろいでいると、突如としてドアが開いた。ニーナが見上げると、そこには蠱惑的な笑みを浮かべる少年がいた。
「ああ、あの程度の薬で四日間眠りっぱなし、寝汚いね」
――誰、この子……。
「世間では君がマーサとやらを殺した犯人になってるよ」
なんてことを、この少年はさらりと言ったのか。そもそもマーサさんが殺されたとは、どいういうこと?
なにも分からないニーナもとへ、ゆっくりと少年は歩み寄ってくる。手にしているのは細剣だ。月の光が刃を銀に光らせた。
恐怖のあまり、ニーナは後ずさりする。しかし壁際まで追いつめられて、細剣の切っ先を突きつけられる。
「さあ――あんたもそろそろ終わりだね」
雲が晴れ、月が少年の顔を照らす。その顔に、感じるものがあった。
「――っ!」
「あれ、わりと頭いいね、じゃあ賞品として――」
苦しまずに殺してあげる、と少年は言った。ニーナは涙を浮かべながら、震え続ける。
まさか、まさか……っ!
「でも君はまだ生かしておくよ」
すっと突きつけられた剣がおろされる。
そして少年は細い唇で弧を描いた。
「そして最悪のタイミングで君は黒薔薇と再会を果たす。アイツは君を見て、他人を相手にするような態度を取るだろうね!」
――どういうこと? 姫様があたしを……?
パニックに陥るニーナを顧みず、少年は当て身を喰らわせてきた。
少年はレイピアを鞘に戻し、残虐な笑みを浮かべた。
「さて、残すはガーネットか。まあ、美少年好きのおばさんだから簡単か……あとは、皇帝と毒薔薇か……くくっ、両方とも絶望に乾くがいいさ」
失神したニーナを残し、少年はもと来た道を戻っていった。
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