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すると黄色い犬が俺に呼び掛ける。
「じゃあね!またね」
もう会う事もないだろうから、俺は返事をしなかった。
俺が角を曲がってしばらくすると、大きな音がした。アレは大きな動く塊が急に止まる音だ。
俺は気になったので、また角を曲がって戻った。
そして俺が見たのは黄色い犬が倒れている光景だった。
俺は駆け寄ってかすれ声の黄色い犬の声を聴く。
「飼い主さんは無事かい?」
こいつは、このニンゲンを庇ってひかれていた。
俺は咄嗟に返事をする。
「無事だよ。お前馬鹿か?このニンゲンはもう死ぬんだろう。庇う意味あるかよ!」
黄色い犬が静かに応える。
「飼い主さんだから...」
黄色い犬が死んだ。ニンゲンは黄色い犬の名前を何度も呼んでいる。
周りにニンゲンが集まってきたので俺はそこを離れた。
イライラする。
なんだアイツ。イライラする。
ニンゲンを庇って死んでどうするんだ。あのニンゲンはもう死ぬのに。あのニンゲンもそうだ。たかが犬が死んだくらいであんなに泣いて。
イライラする。
白い犬は、さっきの場所に向かって大きく吠えた。
そして、寝ぐらに戻る。
夜もふけてきた。俺は眠る。
俺は白い犬だ。名前はナイ。
面倒くさいので、もうそれでいい事にした。
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