姉歯調

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ツルリツルリと舞い滑るようなヅラを着けた。 姉歯調。 夏の夜の真ん中月の下。 悦びの「見てよ、見てよ!」 役目を終えた頭皮に、若者に似ている漆黒の髪。   9696に尋ねてみた、どこまで禿げるか、と。 いつになれば終わるのか、と。 9696は答えた、終りなどはないさ。 終らせることは出来るけど。   うそ!? じゃあお願いしますと植え込んだのはずっと前で、ココに未だ抜けない 髪が僕自身か、と疑ったのは今更になってだった。   頭に乗せた、それだけで良かった。 世界に光が満ちた。 夢で生えるだけで良かったのに、なびかせたいと願ってしまった。 願いが様相を変えた。 この禿には自毛と罪が混じる。   知人がたったひとひらの、髪の毛に賭けた意味を無理に知ることはない。 そう、それは同志(とも)に、できるなら姉歯に届けば良いと思う。 「もしこれも偽装なら…」 なんて、酷い言い方だろう? 包むことも隠すことも出来ずに、ただ一人法廷に立っているだけなのだから。   頭が戻るのなら、この地位などいつでも投げ出して良い。 抜け落ちた全ての髪が、だよ? まだココに一握り残った僕の想いを、救いあげて、心の隅に植えて。   荒野に咲いた姉歯調、ズレるその毛束の虚構。 近づくことはさせないor死す。 バレないヅラを下さい、できたら生やして下さい。 僕の「かなり禿」を隠しておくれ。
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