第1章

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 そして、極めつけは母さんのフリルエプロンのお尻についている細くて長いしっぽ。  そろそろ、暴露してしまおう。  そうだ。そうだよ。俺の母さんは、そのまんま猫なんだ。  この事実を思い出すたび俺は泣きわめきたくなる。  どうしてかわからないが、生まれたときから俺の母さんは猫だった。  見た目はまるっきり猫だが、母さんは人間みたいに二足歩行で歩くし、買い物もするし、料理もする。  それに、ぺちゃくちゃ近所の人とおしゃべりするのが大好きだ。つまり、中身はまったく専業主婦の「猫」だった。  こんな母さんから生まれた俺は人間じゃないのかもしれない。生まれてから十四年来ずっと悩んでる。  だがしかし、ここで声を大にして言いたい。  諸君、俺を見てくれ。  俺はまっとうな人間だ。(自分で言うのも変な話なんだが。)  手足は母さんみたいに丸くないし、耳は母さんみたいに三角じゃない。断じて違う。  この俺のどこが母さんに似ているっていうんだ? 「母さんと俺、絶対に似てねぇよ」  俺は完全否定する。  父さんの隣に座って湯呑みをのぞいていた母さんが、「あらっ!」と目を丸くして顔をあげた。
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