第1章

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 しかし、男は目が洞穴のようだったので、明るいものしかよく見えない。そういうわけで、丘に立っている人物が黒い塊となってごろごろ転がってくるように見えた。もちろん、相手はふつうに歩いていたのだが。 「やややっ? あれは黒いけどおまえの仲間じゃなさそうだな」  カラスは男を馬鹿にしたように「アホカァー」と鳴いた。 「大きなからすに変装したってむだだぞ。このジャックさまはそこまでばかじゃないんだからさ」  男はにたりと笑うと、城の入り口に走っていった。まぁ、正しく言うと、両足にバケツがついたままだったのでうさぎ跳びをしてだが。  その子は、何から何まで黒かった。ああ、とんがり帽子の下からのぞいた肌だけは肌色であったけどカールした長いまつげを見てもわかるとおり、かわいらしい女の子だった。  女の子は城までやってくると、扉のすぐ横にいるかぼちゃ男にきづかずに扉をノックした。  2回、3回。だけどだれも出ない。 「留守なのかしら」  女の子は扉に手をかけた。木製の扉はお客を歓迎するようにするりとひらいた。  ああ、ジャックは扉の鍵をかけ忘れていた!  そのカギはちゃんとジャックの空洞になってる頭にしまってあったのに。
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