花とオレンジ

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半年前まで、色のない世界の中にいた。 いつも目の前の景色は灰色掛かっていて。 いつしか人の顔も見なくなっていた。 そうして私の人生静かに終わっていくのなら、それでも良いとさえ感じていた。 けれど、そんな退屈な私の世界にいきなり飛び込んできたオレンジ。 色を与えてくれたのは、ひどくあたたかい目をした君だった。 笑い方を忘れた私に、花のように笑えと言ってくれた。 私の笑った顔が好きだと言ってくれた。 私に友達を教えてくれた。 恋も教えてくれた。 伝えたいことが増えた。 口下手な私は、いつも言葉足らずで、君のことを傷つけていたかもしれない。 だけど、これだけははっきりと、自分の口で言いたい事がある。 「ありがとう」と。 「大好きです」と。 まだどれも言うことが出来ていないのに、君は私を置いてどこへ行ってしまうと言うのか。 君がいない世界なんて、私にはありえない。 君がいたから、今の私があるのに。 一度色を知ってしまった私には、もう灰色の世界に戻るなんて出来ないよ。 怖いよ。痛いよ。 お願い伊織。 頼むから、目を開けて。 お願いだから、またあの優しい目をして笑って下さい。
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