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着いた先は病院だった。
どうしてこの場所に来たのかは分からない。
私の体が、勝手にここを目指したんだ。
そして、一つの部屋の前に辿り着く。
扉を開けると、そこのベッドには目を覚ましたばかりのオレンジ髪の成年がベッドから体を起こしているところだった。
気付いた看護師の人が口元を抑えた。
目には涙が浮かんでいる。
「今、先生呼んできます......っ!」
私は、目の前の成年に歩み寄った。
そして恐る恐る頬に手を伸ばしてみる。
「触れる」
「人を化け物扱いするなよ」
涙が溢れた。
涙を流すのはいつぶりだろうか。
あの時も、こんな風に涙が出たのだろうか。
「おかえり、伊織」
「ただいま、ハナ」
抱きしめた伊織の背中は、あの頃よりも少し大きかった。
END.
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