王城―宰相執務室にて

2/2
14人が本棚に入れています
本棚に追加
/165ページ
「結界は各国ごとにその国の事情で存在する。もちろん作れない国もありますが…でも中には共通の事情、問題で構築されている結界もある。火山地区を持つ国々の結界です」 世界にひとつしかないこの大陸に火山はひとつだけ。 1万年間活動し続ける、単一火口の火山。 カザフィス国西部にそびえ、時に噴火し、大抵は噴煙をあげている。 その被害から国民を守るため、カザフィス王国はもとより、隣接するサールーン王国、セルズ王国が国境線に結界をつくり、さらにその隣国であるボルファルカルトル、シャスティマ連邦も関わっている。 「もしそれらが破綻すれば、この国は無事でも、周辺諸国は、下手をすると他の国は…」 ユラ-カグナも、活動中の火山を見たことがある。 溶岩を眺めつつ、その熱気を感じない事実に、結界が存在しなかったらと背筋を寒くしたものだ…。 また、噴煙の影響は広範囲に及ぶだろう。 結界の向こうに降り積もる灰の深さは、想像力を充分に()き立ててくれた。 「カィン…」 呟いて、ユラ-カグナは数拍、息を止めた。 「考え過ぎでしょうか…」 そう言うカィンに、ユラ-カグナは、いいや、と呟く。 「いいや…カィン、よく気付いてくれた」 ユラ-カグナは墨筆を置き、机の上をそのままに、立ち上がると、カィンを伴って部屋の外に出た。
/165ページ

最初のコメントを投稿しよう!