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「結界は各国ごとにその国の事情で存在する。もちろん作れない国もありますが…でも中には共通の事情、問題で構築されている結界もある。火山地区を持つ国々の結界です」
世界にひとつしかないこの大陸に火山はひとつだけ。
1万年間活動し続ける、単一火口の火山。
カザフィス国西部にそびえ、時に噴火し、大抵は噴煙をあげている。
その被害から国民を守るため、カザフィス王国はもとより、隣接するサールーン王国、セルズ王国が国境線に結界をつくり、さらにその隣国であるボルファルカルトル、シャスティマ連邦も関わっている。
「もしそれらが破綻すれば、この国は無事でも、周辺諸国は、下手をすると他の国は…」
ユラ-カグナも、活動中の火山を見たことがある。
溶岩を眺めつつ、その熱気を感じない事実に、結界が存在しなかったらと背筋を寒くしたものだ…。
また、噴煙の影響は広範囲に及ぶだろう。
結界の向こうに降り積もる灰の深さは、想像力を充分に掻き立ててくれた。
「カィン…」
呟いて、ユラ-カグナは数拍、息を止めた。
「考え過ぎでしょうか…」
そう言うカィンに、ユラ-カグナは、いいや、と呟く。
「いいや…カィン、よく気付いてくれた」
ユラ-カグナは墨筆を置き、机の上をそのままに、立ち上がると、カィンを伴って部屋の外に出た。
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