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「全く。」優くんはため息をつく。
私は一通の手紙を預かる。彼女からの手紙はいつも私が読むことになっている。
「早瀬くん、手紙読むよ。」
「了解。」と言って早瀬くんと後輩マネージャーの若林未来ちゃんがやってきた。
差出人は7年前に転校していった月島あやめちゃん。私達4人と同じく転校していった荻窪茜ちゃんの6人は幼馴染みで仲良しだった。ある事件で二人は四日市へ。サッカーを通じて再開し、今は文通をしている。
スマホの時代に?と思うんだけど、あやめちゃんは手紙がいいらしい。
私たちは木陰に腰を下ろした。
じゃあ読むね。私は一枚目の便箋を手に取った。
「Dear、響子ちゃん、未来ちゃん、倉本君、早瀬君、お元気ですか?
私はとってもっていうくらい夏バテ中です。7年たっても一向に慣れません。夏だけ気候かえない?って思っちゃいます。」
「…。」「相変わらずだな。」みんなで苦笑い。
「私たちが転校して7年。高校生生活もあと少しだね。こっちは驚くことがたくさんありました。まず、茜ちゃんが卒業したらバンドの女性ボーカルとしてメジャーデビューが決まったんだよ。1年生の文化祭で私達とバンドデビューしたときは生徒300人くらいしか集まらなかったのに、去年は父兄、友人合わせて3000人くらい集まって体育館溢れかえっちゃって。今年はグランドに特設ステージ作るらしいの。私もキーボードで参加するんだ。よかったら見に来てほしいな。」
「茜ちゃんすごいです。私親に頼んで見に行きます。」未来ちゃんは茜ちゃんのファンだからな。
「あと、残念なお知らせ。太一君は高校生でサッカー引退することになりました。」
「なんだって!」早瀬くんが叫ぶ。
佐々木太一君。優くん達の小学校からのライバルで、四日市第一高校のキャプテン。去年のU-17世界選手権の日本代表。世界最高の高校生DFとして、高い評価を受けていた。
「怪我か?」優くんも心配そう。
えっと、
「実は太一君は去年から茜ちゃんと付き合うことになりました。二人は今や恋人同士。太一君はサッカーを辞めて、茜ちゃんのマネージャーをすることに決めたみたい。」
「…。マジか…。」早瀬くんは呆れ返った。「優といいなぜ俺たちの年代は…。」
「いいじゃないか。佐々木にとってサッカーより、荻窪が大切なんだろう。俺たちの親友を大事にしてくれるんだ。」
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