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俺は一体何をしているのだろう?
異世界に転生してから初めて、いや、人生で初めて胸や腕に防具を身につけ、タガーやナイフではなく、剣を腰にぶら下げている。
そして、この装備の上から自前のローブを身に纏って、女騎士二人の後ろをついていく。
どういう状況だ?
とにかく今は、やれる仕事をやるしかない。
それはそうなんだが…。
階段を上りきり、武器庫への扉が見えてきた。
エレーナが扉に手を添えて、押し開けた。
仕事は始まっているのか、武器庫の中は慌ただしい雰囲気だった。
倉庫を横目にギルドへつながる、通用口へと足を進める。
エレーナが再び、扉を押し開けてると、半屋外の渡り廊下が現れた。
外に出ると、外は雨だった。
昨日ぶりの外の空気、外の景色だ。
一晩とはいえ、地下にいたからか少し解放された気分になった。
だがすぐに、解放された気分は終わった。
先導する二人が、渡り廊下を進み、ギルドの中へと進んでいった。
この街のギルドは初めて見る。
ただ、俺がいた街のギルドと構造は似ているようだ。
教会のような大きな空間に、ベンチとテーブルが並び、壁の一部には仕事の依頼が貼り出される掲示板が設置され、ギルドの一部には食事や酒の飲み食いが出来るスペースがある。
違う点を挙げるなら、ギルドが広いこと、作業部屋にあたる個室が複数あること、それとこのギルドの二階部分に書庫というものが存在することだ。
今まで見たことのない規模のギルドに驚かされながら、前の二人についていく。
この時間はこれから王都から来訪者があるからか。ギルド内は職員しかいないようだった。
女性職員の一人がこちらに気づいたようで、お俺たちに近づいてきた。
「こんにちは、エレーナさん」
「やぁ。すまないな、急に動いてもらうことになって」
「いえいえ。いつもお世話になってますから。それに、アーシアさんもご無沙汰してしております。こちらに戻ってこられていたんですね」
「そうだ。彼女もこちらの作戦にあたることになったのでな。今日もこちらに同行してもらっている」
「そうだったんですね。あと、そちらの方は…」
「あぁ。我が軍の協力者だ。奥地にある街から同行してもらっている」
ギルド職員は軍への理解があるようだ。
俺はローブを外して、職員に顔を見せた。
「よろしくお願いします」
俺がそう言うと、職員はにっこりとした。
「それで、管理役の人物はきたのか?」
エレーナがそう聞くと、職員は首を横に振った。
「まだ、到着されてないようです。来られた際には、緊急放送で住民の皆様にお知らせして、そのあと、ギルド二階の書庫にご案内して、見学していただく予定です」
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