84人が本棚に入れています
本棚に追加
男は腰の剣を抜いて構えた。
「この国を乱す輩は、必要ありません。このクルド、この街の監視役として反乱分子を粛清します」
クルドは剣を手にアーシアに切り掛かった。
するとアーシアも剣を抜き、クルドの剣を弾き返した。
剣と剣が交わる音がなんどもなんどもギルド中に響いている。
クルドの剣の動きに対して、アーシアは冷静に見切っているかのように、剣を重ねていた、
エレーナはこの間に、麻酔銃の準備を進めている。
クルドに隙が出来たら、すぐに打ち込めるように。
幾度となくぶつかり合っていた剣は、アーシアが弾き返したことで、クルドとの一定の間と距離ができた。
「やはり、あなたに剣を持たせると敵わないですね。さすがは元護衛部隊の騎士ってところですかね」
クルドはそう言って、再びアーシアに切り掛かった、
しかしアーシアはそれをひらりと躱し、自身の剣で甲冑の胸のあたりに見事な突きを見せた。
クルドは背後に蹌踉めいた。
すると、
「おとなしく、魔法に頼った方が良さそうですね…」
と言って剣を持っていない左手で魔法陣を展開した。
クルドの左手からは不気味な紫色の鎖が現れた。
紫の鎖は床を這うようにアーシアに向かって素早く進んでいった。
アーシアは剣を床に刺し、棒高跳びの様に空中へ飛び上がった。
甲冑を身につけてるとは思えない身のこなしだ。
「……」
クルドはなにかを呟くと、紫色の鎖はアーシアの後を追うように、空中へと舞い上がり、怪しげな光を放ちながら、アーシアの右足に巻き付いた。
床に着地したアーシアは片膝をつき、そこから動かなくなった。
「まさか、城の時と同じ捕まり方をするとは…。詰めが甘いですねぇ、隊長」
一歩ずつゆっくりとアーシアに近づいていくクルド。
アーシアは跪いたまま動かない。
書庫で待機しろという指示はあったが、これはさすがにまずい状況ではないだろうか。
やっぱり、俺も魔法を使うべきか。
俺は床に降ろした剣を手に取り、剣に魔力を集中させる。
あっという間に、剣は黒い鎖を纏い、怪しげな光を放つ。
俺はその剣を右手に持ちながら、ロの字に広がるギルド2階の廊下を足早に移動し、ギルド入口側の廊下、つまりはクルドの頭上付近へと到着した。
だが、俺の心配は、バーンという大きな音とともに、嵐のように過ぎ去っていった。
聞き覚えのある大きな音、エレーナが銃を放ったようだ。
下のフロアを見渡すと、紫色の鎖は消え、今度はクルドが片膝をつき、動かなくなっていた。
これはエレーナとアーシアの作戦だったのか?
最初のコメントを投稿しよう!