第陸章  女神の加護と獣神の加護②〜香具夜姫伝説と桃太郎伝説〜

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第陸章  女神の加護と獣神の加護②〜香具夜姫伝説と桃太郎伝説〜

【天罰】による【亜神】の記憶と【権能】を封印されていた【女神・エレオノーラ】の記憶が戻ったのは【月詠(つくよ)】が【なよ竹】を連れ去った瞬間だった。【獣神・ヴィットリオ】のほうはかなり以前に記憶が戻っていたようで、【なよ竹】を影ながら護衛していた。 【なよ竹】が5人の貴族たちへ『仏の御石(みいし)の鉢』『蓬莱山の玉の枝』『火鼠の皮衣』『竜の首の玉』『(つばくらめ)の子安貝』の《入手不可能》な5つの難題を課した辺りは、まだ見過ごしておけた。その5つの宝は【天上界】にしかないものだ。現在では『火鼠の皮衣』と『竜の首の玉』は【錬金術】で【錬成】可能である。  律鹿「あれは愉快でした。5人のストーカー………失礼、5人の貴族たちが金にモノを言わせて【模造品(レプリカ)】を造らせていました」  律鹿(りっか)がうっかり口を滑らせてと言ったことに対して忍武(しのぶ)は、あの時代の人から見てもヤバい行為に見えていたことを知る。  忍武「【平安時代】の人が見ても犯罪だったっんすね」  律鹿「たちが悪いよ。【貴族】だからね。屋敷の垣根の隙間から覗き見していたのを見た時は、思わず石を投げつけてしまったよ」  その頃は、私は【女】だったから気持ち悪くてつい、と言う律鹿の気持ちは十代の女の子には共感できるものがあった。麻衣那(あいな)上総(かずさ)も嫌悪感を覚えた表情である。このくだりは【古典文学】の【竹取物語】でも有名な話だが、創作と実際の出来事の違いで反応が大きく異なる。  朔「その時代のことなら、俺の【前世】の記憶にもある。山にひとりの【剛健の武者(むさ)】が現れて、【帝】の元へ輿入れさせられる【女】を取り返したいから協力してくれと頼まれた」 【闇嶽之王(くらみたけのみこと)】の頃のことだった。【妖主・鬼陸之王(きくがのみこと)】を封印した直後のことで、を送っていた。  話を聞くと、【剛健の武者】は【人間界】では【月詠(つくよ)】と名乗っているが、本当の名は【天上界】の【獣神・ヴィットリオ】だと言う。そして取り返したい【女】というのは彼の伴侶である【天上界】の【女神・エレオノーラ】で【人間界】では【なよ竹】という名の近々、【帝】の元へ入内することになっているそうだ。 【闇嶽之王】は、その荒唐無稽な話を信用したのか「【女神】を娶ろうとは愚かな【帝】だ」とお上を嘲笑い、【月詠】への協力を快諾した。  こうして、【山の民の王】の協力要請で【京の都】周辺の【古族】たちが【月詠】の手助けをし、【なよ竹】を【帝】の寝所から連れ出すことに成功した。 【二柱一対】の【亜神】は、一方の記憶が戻るともう一方の記憶も徐々に戻るようになっているのか【なよ竹】が【女神・エレオノーラ】の記憶を取り戻すことにさほどの日はかからなかった。  二柱共に記憶が戻ったことにより【天上界】と【人間界】を【光の御柱】が結び、【獣神・ヴィットリオ】と【女神・エレオノーラ】は【天上界】へ還って行った。この様相が『輝夜姫と月詠王』の伝承である。  朔「この翌日に、【闇嶽之王(くらみたけのみこと)】はして、俺は【五代目小太郎紅蓮】に【転生】するまでに入ったんだ」  最澄「【闇嶽之王】への感謝の証として、【獣神・ヴィットリオ】は【古族】へ【獣神の加護】をそして、【女神・エレオノーラ】は【古族の伴侶】へ【女神の加護】を与えました」  実は、この【女神の加護】により【古族のツガイ】は【不老長寿】になっているのだと、極秘情報を【最澄】は漏らした。  それを聞いて、麻衣那(あいな)上総(かずさ)はほっとした表情になる。【人間】と【古族】の【寿命】の違いを気にしないように努めていたが、やはりどこかで気にしていたようだ。  國光「じゃあ………【獣神】と【女神】が【人間】に【加護】を与えてくれるのは、【前世】の朔さんのおかげ!」  國光(くにみつ)の言葉に【空海】が肯定の意で頷く。  あざっす、と國光が朔に一礼するので貴輔(きすけ)伊角(いすみ)も右へならえで一礼した。なかなか統制が取れている。  朔「知らなかった!けど、人助けってやっておくべきだな」 【闇嶽之王】の善意が巡り巡って現在に至っている。  桂「これで、なぜ【亜神】は【人間】に【加護】を与えるのかという謎が解明できたな」  1つの謎は解けた。今の話の内容で【女神】と【獣神】がだと判明したことで、背徳的な疑問が湧いた。  洸「【女神】が御影に一目惚れしたってやつは………不倫理なアレにならないのか?」 【神の世界】での道徳感──────────存在するかどうかわからないが──────────に反していないのだろうか。  最澄「ヴィットリオとエレオノーラの【婚姻】は、【契約婚】と呼ばれる形式に当たります」 【神仏の世界】では、『身の潔白の証明』や『利害関係者の一致』などで【制約】(条件)または【誓約】(約定)を取り付けた【契約結婚】が成される。有名な話が【スサノオ】が『身の潔白の証明』に【誓約(うけい)】で『男の子が生まれたら悪意なし』という宣言をして【アマテラス】の首飾りの5つの【勾玉】から5柱の【男性神】を生んだ【契約結婚】である。【人間界】の婚姻とは全く意味合いが異なる。  最澄「【女神・エレオノーラ】には自衛手段がありません。故に【獣神・ヴィットリオ】が守護するのです。一方、【獣神・ヴィットリオ】は頭で思考するより先に体が動く行動派なので【女神・エレオノーラ】が知恵を貸すのです。こうして、互いに不足部分を補い合うことによる【契約結婚】です」 【最澄】は失礼のない言い方をしたが、要は【二柱一対】の『一方が死亡すればもう一方も同様』の為に【獣神】と【女神】は常に行動を共にしなければならないから、『夫婦関係』が成立しているだけのことである。  空海「ヴィットリオとエレオノーラは、【天上界】へ還る前に『竹の中』に赤ん坊を生んでいる。その赤ん坊を育てる【竹取の翁】が【山の民の古族】だ」  最澄「【香具夜姫】は世界最初の【Ω種】ということになります。我が子可愛さにヴィットリオとエレオノーラは多大に【加護】を授けたのですが、【女神の加護】は吸収するのに対して、【獣神の加護】が反発して弾かれました」  母に似て『絶世の美女』に育った【香具夜姫】は、言い寄られるだけに留まらず拐かされかけることも多かった。それを助けたのが【古族】だが、これが【あやかし】が【人間】を襲うという噂になり、襲われたのが【貴族】ばかりなので、それが【古族】討伐に拍車をかけた。  十鎖「ハッ呆れたもんだな………加害者が被害者ヅラしてやがる………」  すっかり抵抗する気力がなくなった十鎖(じゅうざ)だが、悪態をつくだけの余力は残っていると見える。だが、十鎖の言っていることは正しい。  しかし【獣神の加護】を持つ【古族】に【人間】は力及ばずなので打つ手なしだが、そもそも【香具夜姫】に手を出さなければ【古族】も攻撃的な動きをしない。  律鹿「この時期でしたね………赤児の頃に内裏から老夫婦の家臣に連れ出されて生き延びていた【皇子(みこ)】がわずか一夜で当時の【帝】とその側近のを一掃したのは」  当時の【帝】というのは律鹿(りっか)が嫌いと言っていた【帝】だ。【なよ竹】を無理矢理入内させようとした【帝】と同一人物である。  この【帝】の名は【歴史書】に残っていない。どの国の歴史でも【帝】や【王】の名が記入漏れすることはある。それが【愚帝】だった為か名を残すような功績が無いせいかは不明だが、この【帝】には名が無い。  桂「どこかで聞いた【桃太郎伝説】に似ているな」  桂の言う【桃太郎伝説】は、1人の若者の【英雄譚】のような話である。 【帝】の【皇子】として生まれたが、他の【皇子】たちと親子ほども年齢が離れており、【皇位】を継ぐ資格はあれど【皇家】が死に絶えない限り後継はあり得ない【皇子】だった。しかし1人の愚かな【皇子】がこの末の【皇子】の暗殺を企て、内裏勤めをする【老貴族】がそれを察知して【皇子】を連れ出し、自身の妻と3人で【京の都】から姿を消した。  一夜明けて【皇子】が消えていたが、継承権最下位の【皇子】がいなくなった所で【東宮】や【皇子】たちの影響はなく、時が過ぎると共にその存在は忘れられた。  一方、年月は流れ【老貴族夫婦】に連れ出された【皇子】は『花も恥じらう絶世の美男子』に成長していた。【皇子】には【吉備津彦(きびつひこ)】という【古代日本史】で【鬼退治】をした【皇子】と同じ名が付けられていた。名付けたのは【老貴族夫婦】だが【皇家】に縁(ゆかり)のある名をあえて付けたようだ。翁(おきな)は【吉備津彦】を連れて【山】へ媼(おうな)は【川】へへ行くのが日課である。翁は【山】で【吉備津彦】に【剣】の稽古をつけ、【川】へに行った【媼】は洗濯に来ている女性たちと『世間話をして世間の情報を収集していた』。  ある日、いつもの日課を終えてそれぞれが帰宅すると、【媼】が【京の都】で【人間】が【あやかし】に襲われる事件があったらしいと言う。情報源は【京の都】に住んでいたが、事件の噂を聞いて恐ろしくなって一家総出で【京の都】を出て移住して来たという女性だ。 【翁】は時が来たことを知り、【吉備津彦】に彼の生い立ちを語って聞かせる。聡明な【吉備津彦】は【愚帝】を討ち【腐敗】を一掃し、内裏の【政(まつりごと)】を司る【貴族】を総入れ替えすることが自分の役目と理解した。  そして、【吉備津彦】は一夜でそれを成し遂げ【京の都】を去ろうとした時、【古族】が現れた。噂の【あやかし】だとわかった【吉備津彦】だが、相手に敵意がないので「何用かと」訊ねた。武力より対話を優先した様子に【古族】は満足したようで、【山】へ招待するので付いて来いと言った。  逡巡する【吉備津彦】だが、【古族】は『招待する』と言ったので害意はないだろうと従った。  連れて行かれた【山】には見たことのない『絶世の美女』がいた。【吉備津彦】はその美女だけは【古族】ではないことがわかったが【人間】でもない気がした。彼女の周辺だけが光輝いているのだ。こんな光った【人間】はいない。  一瞬、噂どおり【あやかし】が【人間】に『悪さをしている』のか疑ったが、目の前の美女は【古族】に大切にされている様子なので、その考えは即座に否定した。  そして、【吉備津彦】は「貴女は何者かから逃げて、ここに住んでいるのか」と聞いた。これだけの美女なので【京の都】の中では目立つ。【吉備津彦】が討伐した【帝】が目を付けないはずがない。  その質問に美女は、「聡明な方ですね。貴方に決めました」と言う。そして【吉備津彦】と美女は夫婦になり仲睦まじく暮らした。  以上が桂が聞いた【桃太郎伝説】だ。  空海「それは、【獣神の加護】を】だ。『伝説』ではなく『実話』だな」 【空海】は、【吉備津彦】が【香具夜】と結婚した所から後の話をする。  空海「香具夜が決めたと言った直後、【光の御柱】から【獣神】と【女神】が【人間界】へ降臨。吉備津彦に娘の香具夜を娶れと結構強引に強要して、吉備津彦には今後は『桃太郎』と名乗れとヴィットリオがした」  この名付けの際にヴィットリオは、【神の実】と呼ばれる【桃】の字と【日本男児】に多い『太郎』の字を合わせて『桃太郎』と付けたのに対して、エレオノーラが元名の響きを残せと『吉備太郎』にしろと少し悶着があったことを【最澄】が補足する。  朔「『吉備太郎』はヒデえな………ダサいぞ」  桂「元名の響きに拘るなら、『桃彦』でもいいだろう」 『桃太郎』という名は【鬼神】とは相性が良くないので『桃彦』はありだったかもと、律鹿は密かにそう考えていた。  玲鵺「『桃太郎』という名を聞くと、フツフツと怒りが込み上げてくる気がする」  忍武「あー俺もっす」  朱貍「【源氏の一族】に対するのと同じ感情が溢れている気がする………」  どうやら生後500年以下の【鬼神】は【源頼光の一族】への忌避感があるようだ。朱貍(しゅり)は自身の誕生年を正確に覚えていないが、子どもの頃には政治の中心が【京】ではなく【江戸】だったと言っているので、おそらく朱貍は【江戸時代】の生まれだろう。【鬼神】の【親世代】では一番若い。玲鵺の両親のほうが年上だが、【酒呑童子】は【茨木童子】の【親分】になるので、立場は朱貍のほうが上位だ。  空海「この話には、まだ続きがある」 【女神の加護】が過剰盛りされた【香具夜】は、『いかなる種族とも子を成せる』という【繁殖特化】の【生命体】である。  最澄「『いかなる種族』とは【超魔】【妖魔】【魔族】も含まれています」 【異形の者】(古族を省いて人外の者全般)は、【人間】でいう所の【生殖行為】を必要としない。たまに、【ゴブリン】や【オーク】のような【人間の女】を『苗床扱い』する【モンスター】は存在するが、基本は【種族の長】もしくは【群れの長】(高い【力(りょく)】を保有する者)が【力(りょく)】で【モンスター】を生み出すので、【人間】とは繁栄手段が異なる。  空海「【香具夜】は【女神の加護】ガン積みの【究極のΩ個体】だ。【Ω】が放つ【フェロモン】………あれが、桁違いなんだ」  桂「ああ………アレに耐えられるのは、もはや【仙人】ぐらいだな」  桂が『契約上の偽装結婚』をしている【邪馬台国の壹与(いよ)】は【Ω種】なので、【ヒート】が起こった時の【フェロモン】の濃さは熟知している。  律鹿「説得力がある御言葉ですね」  桂は【古代中国神話】の【太乙真人(たいいつしんじん)】が【回生】して現在の【宿体】になっているので、自身の言葉通り【仙人】である。自分自身で【Ω種】の【フェロモン】に耐えられることを証明している。  桂は、そうだろうとドヤってみせる。1万才目前の【魂魄年齢】は伊達ではないのだった。  桂「つまり、【香具夜】は【異形の者】から狙われることになった………いや、既に『手に落ちた』か」 【起源の大戦】を元に書かれた【起源の物語】に、【光の乙女】だったか【姫巫女】だったか、『特別な存在の女性』として書かれていた気がする。【起源の物語】では【異形の者】に組みしたとなっていたが、そうなると『桃太郎』の行方が気になった。  最澄「桂さんの言う通り、【香具夜】は【黒須神無(くろすかむな)】という………………」  洸「ここでその名を聞くとは思わなかった………ドカスクソ野郎だ」  酷い言われようである。しかし、洸の1つ前の【前世】である御影は【起源の大戦】を実体験している。【英雄】としての活躍には及んでいないが、【風魔忍】として参戦していた。  洸「【香具夜】は、子を産んでいる。子の名は【マリア天比売(てんひめ)】。出産後、赤児はあり得ない早さで【成人】に育った」 【回生】前の『充電期間』が100年ほどで『充電不充分』だが、1つ前の【前世】なので結構覚えているようだ。  空海「【香具夜】は両親が【神】の【神の子】だ。色々と『規格外』なんだ」  ちなみに【マリア天比売】の父親は、【桃太郎】だと【空海】は補足する。  朔「【桃太郎】を排除して【香具夜】を拉致ったってことか?その時には腹には【桃太郎】の子がいた?」  状況的には辻褄が合っているが、陵御影として当時にそれを実体験した記憶がある洸は、全然違うと完全否定した。  洸「【桃太郎】は自分自身【香具夜】を【封印】した。【獣神の加護】があっても【桃太郎】は【人間】だ。彼の【生命】は【封印】した時に尽きた。しかし、【香具夜】は【神の子】だ。いつになるかわからないが、」  桂「【マリア天比売】は?まだ生まれてなかっただろう。さすがに赤児がいてを行う決心は無理だろうからな」  桂の言う通り【桃太郎】諸共に【封印】された【香具夜】は腹に子を宿した状態だった。  空海「【女神・エレオノーラ】の【権能】は【愛】だ。皮肉なことに【桃太郎】と【香具夜】の【の結晶】は【女神の加護】により」  つまり【封印】寸前で赤児だけ産み落とされた。  洸「後は、ドカスクソ野郎【神無(かむな)】が拾って育てたが、そうそうドカスクソ野郎の思い通りに事は運ばない」 【成人】に成長した【マリア天比売】は、母親と同じ方法で【封印】された。  洸「【マリア天比売】を【封印】したのが【陵影千代】、御影の姉であり【ツガイのα種】で、遙の1つ前の【前世】だ」 【後六天空】からの前情報があるので、朔と桂は遙の1つ前の【回生】の【宿体】だったことには驚かない。だが解せないことがある。  朔「そんな【救世主】をなぜ【風魔】はにした?」  桂「こちらも曾お祖父様が絡んでいるのか?」  曾祖父の陵影璽(みささぎえいじ)の真意がわからない。  洸「影千代は、【甲賀卍谷衆】の【英雄】として殉死したことにされている」  母方の【甲賀】のほうでは、【英雄】扱いらしい。しかし、【風魔頭領一族】の【家系図】からは存在を抹消されている。  洸が知る御影の記憶によれば、陵影璽の『家族関係』が複雑とのことだ。第一夫人、第二夫人と妻が2人で影千代と御影は、この第二夫人の子だが元々、第二夫人と結婚していたのを離婚してドイツ国の【軍人貴族】の娘と再婚──────────この為に上官命令で妻と離婚させられた──────────そして、元妻を第二夫人として復縁という何をさせられているのかわからないことをしている。  祖父・影連(かげつら)と大叔父・影結(かげゆ)の母は第一夫人だが、祖父たちを『代理出産』で第二夫人が産んだそうなので、親権は第二夫人のものだと思えるがこの辺りが日本の親権の法律がドイツ国の【軍人貴族】に通用するのかと更に話がややこしくなるので、影連と影結の親は陵影璽だけとなっているらしい。  朔「俺らの祖父様………家族関係が複雑だな」  単純に4人兄弟と言う関係図に収まりそうにない。  洸「祖父様には上に兄と姉がいる………この2人は、が違う」  朔「第一夫人の『連れ子』か?」  曾祖父が再婚なので、相手も同様に再婚だと思った。  桂「『異父兄弟』『同父同母兄弟』『異母兄弟』………なかなかバラエティに富んだ兄弟構成だな」  洸「上2人は全然、顔が似ていない………第一夫人にはが常にべったりで………あれは、なんだろうな」  もっともその従兄は、もういないが。健在なら150才を超えている年齢だ。【超越の者】の適性がなかったので、【不老長寿】にはなれなかった。  洸「第一夫人『要注意人物』だ。………紫蘭(しらん)伯母上がいただろう。アレに輪をかけた滅多に見ない【外道悪女】だ」  第一夫人は紫蘭の祖母に当たるので、共通点があること自体は当然かもしれないが、かつて紫蘭に人格が変わるほど【呪縛】されていた律鹿と朱貍は、身震いした。  朔「なるほど………現状と関係なさそうな曾祖父さんの話を延々としたのは、か」  桂が、遙は件の第一夫人と面識があって聞いたことがある、と言った。  桂「お祖父様と大叔父上の幸せが許せない………とヤバい感じらしい」  出産を他人(ひと)任せにすると女という生き物は、我が子をあそこまで憎悪するものなのか、と桂は引いた。  朔「ドイツ人………なんだよな?さすがに日本で起こったアレコレに関わっていると考えるのは、突拍子がなさすぎだろ」  わざわざ渡航して、嫌がらせ(?)にしては行き過ぎだが、関与しているとすれば相当暇を持て余していることになる。  素子「いや………今の話を聞いて思い出したが、【柳生屋敷】から『プラチナブロンドの女』が去って行くのを見たことがある」  加齢によって髪の色素が薄くなったものではなく、元々その色彩だと思える見事なプラチナブロンドだった。  桂「本人………かもしれないな。影連お祖父様(父方)と毬お祖母様(母方)が日系ドイツ人なので、俺たちの一族は【ゲルマン系】の混血だが【ゲルマン系】の【プラチナブロンド】はある意味【亜種】のようなものだ。とは考えにくい」  朔の場合は、影連(母方)、毬(父方)になるが【陵家】と【篁家】は【第3世代】(影連の孫世代)が両親共に全く同じ血筋になる。【陵家】は明らかに『ゲルマン系の混血』という容姿に、『プラチナブロンドの髪色』をしている。朔の髪は、ぱっと見銀髪だが実はプラチナブロンドである。対して【篁家】は日本人にしては彫りの深い顔立ちだが、『髪色は黒色』で『瞳の色が特徴のある金色または琥珀色』である。この目は【タイガースアイ(虎目)】と呼ばれる『人を惹きつける目』らしい。桂も洸もグラスに注いだブランデーのような透明感のある琥珀色の瞳をしている。  十鎖「俺に『2人の王子』を殺せと依頼した『外国人の女』だ。お前らの身内かよ」  お前ら【風魔】も終わったな、と十鎖は愉快そうに笑う。かなり破れかぶれになっている。  桂「何を得意げに笑っている?『破滅の道連れ』は多いほど良いとでも思っているのか?この勘違い間抜け底無しアホ男は」  比勇「言い方!」  桂のディスが酷すぎる。似たようなことを言われる比勇には他者に向けられた言葉でも刺さった。  桂「そもそも、お前は【2人の王子】をしている」 『プラチナブロンドの女』が依頼した【2人の王子】は別人で、非常にマズい立場は、『殺った相手を間違えました』の【柳生】のほうだ。  洸がスマホを耳に当てた。着信があったようだ。  話の内容に『封印』や『鍋島』など出ている。  洸「今、桂が十鎖に『種明かし』している最中だ。フライング暴露していいか?遙………」  着信相手は遙だったようだ。  洸は通話を終えると、GOサインを出す。  洸「もう隠す必要がないから、洗いざらい話してしまえだそうだ」 ここから語られるのは、【第五代日本国王】の『スキャンダル』である。【五代目国王】が退位した際に公表しておくべきであった。これを秘匿していたせいで、幼い【生命】が儚いことになった。 ◆+。・゚*:。+◆+。・゚*:。+◆+。・゚*:。+◆+。・゚*:。+◆+。・゚*:。+◆ 【第陸章】終了です。  部位移植をどうするかなど、放置になりますが移植する部位を持っているのは遙なので、現時点では移植できません。作中に記載してませんが、【鬼ヶ島】は【移動要塞都市】です。アニメの『マクロス7』の『シティ7』のようなものとお考えください。  この後は【第漆章】です。【鬼ヶ島】が移動して【九州組】と合流しますので、【第陸章】(洸主観)と【第漆章】(遙主観)は二個一のお話であることをネタバレしておきます。 【第陸章】最後部分のスキャンダルの話は、【第漆章】に持ち越します。  5633d8d8-7746-4a5d-b1e8-667e5bcb3024  AIで作成したイラストです。 後ろ:獣神・ヴィットリオ/手前:女神・エレオノーラ  1人ずつ作成してアイビスペイントでコラージュしました。  2人同時に作成すると片方がイメージ通りにいかなかったり、作成したまま使用するのはさすがにまずいかなと、なるべく手を加えることにしています。  画質の違いや違和感はご容赦ください。 
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