第漆章   ファーストコンタクト

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第漆章   ファーストコンタクト

 白い砂浜は、雪が降り積もったようにも見える。  鹿児島県大島郡の【沖永良部島】は、周辺を太平洋に囲まれたオカリナのような形をした【島】である。  かつては、海辺にサンゴ礁が多かったが現在は海底の【異域】の影響で白い砂浜の面積の割合が大きい。  白い砂浜には2人分の足跡があり、その足跡を辿ると断崖に男女の姿があった。  男のほうは、かなり長身だ。185cm以上はあるだろう。身長に対して体格は細身だが均整が取れた無駄のない筋肉を最低限まで絞りこんだ感じである。髪の色はぱっと見た感じ銀髪に見えるプラチナブロンドだ。  連れの女は烏羽玉(ぬばたま)のような漆黒の長く美しい髪が目を引く。男の身長が高いせいであまり高い印象を受けないが、女性にしては長身の部類に入るだろう。首から肩のラインは華奢だが、部位事には女性らしいラインの体型である。  後ろから見るとと心中を図ろうとしているカップルに見えるが、正面から見た表情はそうでもない。  遙「1時間経ったな………帰るか………」  都「今日で3日目ね………私たちには気づいているはずなのだけど………」  どうやら3日間ルーティーンのようにここへ来ていたらしい。  遙「護衛の数を減らすか………」  無視され続けているのは、【ボディガード】を複数人隠密で連れて来ているのが原因の気がする。しかし、土地勘のない地で遙自身はともかく、都の【ボディガード】は充実させておきたい。  都「そうしましょう。………私のことは、遙が守ってくれるでしょう?」  遙の利き腕でない右手をソッと両手で包むように握って、『あざとい』感じに上目遣いをする。ポイントは男性の腕に不用意に体を押し付けたりしない所だ。こういう仕草を遙は『品位が無いメスブタ』と蔑むほど嫌っている。しかし、意外にも『上目遣いあざとポーズ』は結構ツボのようだ。結婚後から10年以上経った現在でも通じる。  遙「そうだな………強制終了(殺ってしまう)ありなら………」  と言って、遙は身を屈めて利き脚である左脚を払った。  トサッと人が倒れる音がする。白砂が深く積もっているので、衝撃は吸収されている。  遙は、【ボディガード】の連れたちが交戦中であることを感知し、今蹴り倒した相手以外にも数人、こちらに仕掛けようとしている気配を感じた。  遙「都、俺に『背を向けて背後に張り付いて離れるな』」  そう言って、蹴り倒した青年を羽交い締めにして首に左手を掛ける。このまま脛骨を折って『窒息死』させるか、『心臓』をか、どちらにしようかなと考える程度に遙には余裕があった。  遙「隠れている者たちに告ぐ。『死にたくなければ俺の後ろに立つな』」  何かで聞いたことのあることを言っている。  羽交い締め男「ゴル◯13か!」  なかなか良い反射神経のツッコミだと思いつつ、遙は底冷えしそうな低い声で脅しにかかった。  遙「俺は発言を許可していない。………次やったら、口に手を入れて舌を引き千切る」  都「この人、本当にするから………貴方、口を閉じていなさい」  都の口調は命令的だが、羽交い締めされた男はそれに従わなければならない、と思った。『指導者』の発言のように響いたのだ。  そして、競い合うように猪貍(いのり)、リキ、カンナが姿を見せた。  リキ「ヨッシャー!俺が一番!」  猪貍「はあ?同着だろうが!」  カンナ「どっちでもいいよ!状況見ろや!」  猪貍とリキは、どちらが先に遙の元へ着くか競争していたようだ。   正体不明の集団に囲まれて口論を始める猪貍とリキを叱りつけているカンナ含め、3人とも余裕がある。  羽交い締め男(【獅子狗(シーサー)神族】に………『【人間】と【鬼神】の混血』………あと1人は【人間】か………) 【古族】【混ざり者古族(混血のこと)】【人間】の奇妙な3人組を見て、男は先のやりとりから自分を捕らえている人物の仲間と察する。混血とはいえ【鬼神族】の【古族】は1人で無双すると言われる『戦闘力の保有者』だ。更に【南国】では【獅子狗(シーサー)神】は『護り神』だ。のである。残る【人間】の男は、知る人ぞ知る【異種族格闘技世界戦】(【亜人】【人間】【超越の者】【漂泊の者】の【種族関係なく出場が可能】)の【ボクシング部門】で【ライトヘビー級】【スーパーミドル級】【ミドル級】の3階級チャンピオンだ。 【異種族格闘技】のタイトルは【起源の大戦】以後に設立されたのであまりメジャーではないが、【異能力】の発現や【異域】の影響で【魔素】などが漂うことで【変異】する【人間】が全体の7割以上に増えていることから新たに設立された。【人外】の出場も許可されていることから非常に危険なので、【世界タイトル】として認められるのは難しい。しかし、【世界4タイトル】の【ミドル級】チャンピオンベルト保有者のリキが、ここで3階級制覇したことから『格闘技好き』には注目を集めている。ちなみに、リキはファイトの度に【ミドル級】に減量することが成人後には厳しくなってきたので引退した。現在24才なのでまだまだ現役で活躍できるが『減量苦』がツラ過ぎるのだそうだ。  この3人のメンツだけでも戦意喪失しそうなのに、自分を捕らえている遙がこの3人以上に危険人物だと悟る。都を人質にする手段は最初に潰されている。背中合わせでピッタリ張り付く状態は、常に守護対象を身に着けている状態だ。完全守護形態である。特に遙は背後からの攻撃は100%防ぎきる。  カンナは、遙が羽交い締めにしている人物に目をやって、遙にその男がリーダーではないかと言う。  遙「だろうな。………この男には、発言の許可をしていない。口を開いたら舌を引き千切ると脅し………言い含めたからな」  猪貍「遙………今、ウッカリ脅したって言いかけただろ」  気の毒に、でも言う事聞かないと本当に引き千切られるからな、と猪貍は男に忠告する。  リキ「遙………マジでドSだな。口利けなかったら、どうやって撤退命令出すんだよ」  無理ゲー詰んだお疲れさん、と他人事なので言葉が薄っぺらい。  遙「頭を使え」  遙は、ほんの一瞬だったが男が都を人質にしようと考えたことに気づいている。許し難い思考だ。自分の気が済むまで嫌がらせしようと考えていた。  その時、崖下から大きなナニカが頭上に踊り上がった。  一同は、条件反射で上を見る。遙だけは面倒そうに眼帯の無い右眼を細めると、懐に左手を入れて大型の【拳銃】を取り出し構えた。  遙が【照準】を合わせている様子に、捕らえられている男はギョッとする。警告無しでいきなり発砲する気かと。  しかもよく見ると、【拳銃】の【種類】はだ。形状は【ウォーターガン】に似ているので、結構な大型だ。しかし、プラスチック製の玩具ではなく金属製の殺傷用のモノだ。リボルバー式だとすぐわかる大きさの『レンコン穴』が付いているがその形状も大きい。この大きさだと【銃弾】は当然、【特注品】だ。  しかし、問題点が1つ。【拳銃】のサイズは【マシンガン】か【ショットガン】のサイズだ。マッチョな体格の猪貍やリキなら問題なく撃てる。しかし、遙は縦には大きいが体格は細身──────────必要最低限の筋肉だけ残して絞りこんだ体型──────────で手にしている【拳銃】を撃つと反動で手首骨折しそうな感じである。  ドスンと音がしたのは物体が地に着いた音だったか、発砲音だったか音は1度きりだ。  カンナ「………巨大【ハブ】?」 【沖永良部島】は【ハブ】生息地なので、思わずそう思った。  猪貍「なんか………ヤッ◯ーマンの『悪役メカ』みたいだな」  リキ「操縦者が乗ってるみたいだし………まんま◯ッターマンじゃねえか」  遙が銃弾を当てた箇所が破壊されて【操縦席】が丸見えになっていた。銃弾の威力が【拳銃】のそれではない。  遙「人数も3人。だが………あの『ドロンボー一味』、見たことある顔だな」 【操縦席】の3人は、見知った人物たちだった。  猪貍「自分のを何て呼び方するんだ………」  彼らは猪貍にとってもである。  操縦席から、(なつめ)が飛び降りて体操選手も真っ青な着地を決めた。  棗「相変わらず、惚れ惚れするようないい腕だな。遙」  遙「息子に向かって惚れ惚れするとか………キモい」  久々の親子再会の挨拶だが、遙が空気を読まなかった。  遙は、【巨大ヘビ型メカ】の着地に合わせて発砲して、動く的に狙い撃ちを決めていたのだった。  百合子「遙くん!その【拳銃】!それで【メカ】の装甲に【錬成陣】を展開して【分解】したのね!」  興奮気味に専門的な単語を口にする女は、【篁家の兄弟】の母親だ。彼女は【甲賀忍】の【錬金術博士】と呼ばれる【科学者】だ。  それ【聖古式銃(せいこしきじゅう)】でしょう見せて、と言う百合子(りりこ)に最後に操縦席から出て来た(りょう)がやめておけと止めた。  燎「それは、【錬成】できた【錬金術銃】だ。一点モノだから【呪詛】がかかっている。リリが手にした途端に【呪詛】が発動するぞ」 【錬金術博士】なので、一点モノがいかに貴重なものかわかっているので、百合子(りりこ)は残念と首をかしげて額をペシッとする。棗たちと同世代のはずだが、20代の若い女の子のような仕草をする。その首をかしげてペシッは、百合子の娘の(あずさ)がする仕草なので似た者母娘である。  遙が手にしている【拳銃】は【聖古式銃】あるいは【錬金術銃】と呼ばれている。どちらも正式名ではない。前者の【聖古式銃】は【SA(セイクリット)】【AN(エンシェント)】のランク──────────いずれかの【ランク】だが前例がないので決めかねている状態──────────が語源になっている。後者の【錬金術銃】は【性能】をそのまま名称にしている。【銃弾】が着弾すると【陣】が展開される。【陣】の種類は【錬金術】【鬼道】【西洋魔術】なんでもありの【チート銃】だ。ただし【銃弾】は【特別製】になるので入手手段が限られる。【銃弾】に【陣】が入っていて発砲で【陣】が展開、着弾で【陣】が敷かれる仕組みだ。製作者は遙で、100回ぐらい失敗して唯一成功した一品である。当然、遙は所有権は自分と決め込み自分以外が使と【呪詛】が発動する仕様にしている。  遙「見るだけなら呪(のろ)われないけど………リリコさん、絶対バラすだろう」  頭に【(マッド)】の文字が付く【科学者】は、【解体】して隅々まで調べ尽くさなければ満足できないサガなのだ。  燎は、とりあえず捕らえている男は自分たちの知り合いだから離してやれと言った。  燎「あと、都姫もいつまでも背を向けたままというのは………」  都「私は構いません!………こうして、ピッタリと身を寄せ合っていると、私は護られてるのをひしひしと感じています」  遙が離れていいと言い忘れていただけだが、都はこの状態を堪能していたようだ。  百合子「まあ………ラブラブね!夫婦になっても気分は『恋人』!素敵よ」 【錬金術博士】というオカタイ肩書の割に百合子(りりこ)は、ロマンス小説系のノリが好きであった。自分の娘がロマンス小説系に程遠いので、他人(ひと)の色恋に野次馬したくなるタチである。  都と百合子の『女子会トーク』なノリに、遙と燎は引く。燎は、とりあえず遙に捕まえている男を離してやれと言う。  燎「その男は、【番外組】の【小頭】だ。そいつが号令を出せば辺りに潜んでいる奴らは撤退する」  遙「【番外】………なるほど………3日間続けた甲斐はあったわけだ」  3日目にして、目的の場所へ案内してもらえそうだ。 3d9f6cc1-4713-437d-8cb4-4bf1a543532d 男性:遙/女性:都  AI生成のイラストです。  お姫様抱っこしてるイラストの指示をしましたが、おんぶしているイラストが出来上がりました。  人間2人に性別とか髪型、服装など情報量が多かったので、瞳の色や遙の眼帯はアイビスペイントで描き加えました。 
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