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第漆章 ニライカナイ③聖骸
【一寸法師】は、百数十年ぶりに影千代と再会した。
一寸法師「影千代様………お久しゅうございます。【陵家】を出る際、見送っていただいた以来です」
【一寸法師】が【陵家】を出る際、隠密行動だったので見送りは父・影連となぜか付いて来た影千代の2人だけだった。父ひとりだけだと思っていたので【一寸法師】は驚いたが、その時の影千代は「サプライズ成功!」と悪戯っぽく笑った。そして、それが【一寸法師】には生きている影千代を見た最後だった。
影千代「………ええっと………今は『一寸』と呼べばいいのか?」
【影千代】は、本名呼ぶのはマズいよねと確認を取る。
一寸法師「旅立った後に、名は捨てました。僕の名は母がくれた【宝】です。『修羅の旅路を行く』以上、僕自身が汚れきった鬼畜外道となる覚悟をしていました」
だからこそ、母からもらった『真の名』は自身が汚れきってしまう前に母の墓石に置いて来た。父・影連に母親の墓石の他者の目に触れない場所に自分の名を刻んでおいてほしいとお願いをした。影連の返答は聞かなかったが、あの父なら意を汲んでくれていると信じている。
生前の【影千代】と面識がない【ウラシマ】、棗、燎は【影千代】と遙の両者の顔を見比べて、驚愕する。
燎「髪の色と瞳の色と性別を除けば、同一人物だな………」
遙「いや………『同一人物』だよ。俺の1つ前の【前世】だからな」
現在、遙と【影千代】は並んで座っている。『【陵家】の男子』に遺伝する【特異能力】、『【前世】の人物』の『【分身】を作り実体化する』という【能力】で遙は【影千代】を【分身】で出した。
【影千代】が鬼籍に入った年齢は17才だったので、そこにいるのは『自称・17才の乙女』だ。【家系特異能力】は便利だが、服装など凝った部分は杜撰になるようだ。【影千代】の衣服は遙と同じ『男モノの忍服』だ。【影千代】は、「イエーイ、ペアペアルック」とノリが良かったが遙がウザがっていた。性格のほうは、正反対の気がする。
棗「何というか………陽キャだな。もっと、クールで近寄りがたいイメージだった………」
最期が『生命』がけで【マリア天比売】を【封印】した【大英雄】だ。初対面の「影千代だよ。よろピコ」に棗は引いた。遙もよろピコはないわ、とブツブツ言っていたが、こちらは遙のよろピコいただきましただった。
あのあと、『女郎屋』の件は【ニライカナイ】では無理という結論になった。当然だ。ただし、遙曰く『ビッチ』女子たちは【風魔五番隊】が引き取り【歓楽街・吉原】で【遊女】をさせることに決まった。
この部分だけだと『女衒に売られる女たち』だが、【風魔五番隊】は別名【くノ一部隊】そして、【歓楽街・吉原】は『訳アリ』の者たちを集めて管理する『更生と保護を目的とした施設』の1つだ。『【竜宮城】のイタズラ好きっ娘たち』は、遙に【くノ一】適性を認められた。
【国王制】になってから【東京】【大阪】【京都】【長崎】のかつて大きな【遊廓】があった地に再び【遊廓】が復活した。しかし、そこで働く者は基本は【公務員試験】を合格した【公務員】である。大半が【役人】の紹介や【警察関係】が元犯罪者の就職先を世話などで【公務員】ではない者のほうが割合は多いが、いずれにしても【お上】が関与して労働を許可しなければそこで働けないというお堅い採用条件である。昔のように『生活難で売られた者』はいない。【遊廓】となっているが【料亭】や【文化会館】などもあり、『接客』の他に『作業員』『事務員』の仕事もある。【文化会館】では【能】や【歌舞伎】などの【伝統文化芸】の公演や【劇団演劇】なども行われるので、『舞台セット制作』『音響係』『照明係』と専門職に就く者もある。
話は戻って、【ニライカナイ】には【桃太郎】がかつて【封印】した【香具夜】が【聖骸】として保管されている。この【聖骸】の【能力】を知り、【一寸法師】は『【地仙】の資格』を捨て【ドワーフ】を選択した。彼が【超越ドワーフ】となっているのは、『【超越の者】に【覚醒】して【ドワーフ】を選択した』という過程を省略して視えているのだった。かなり紛らわしい。【超越ドワーフ】の文字を見た時、遙は『よくわからないが壁を突き破って超越したスゴいドワーフ』と勘違いした。
一寸法師「ぶっちゃけると、【香具夜】の【体】のパーツは【武具】【装備】になる。そして、【香具夜】は【真血】の【神の子】だ。残酷な言い方だが『体の部位を』捥いでも元通り【再生】する」
素材無限取り放題である。
棗「待て待て………さすがに姿形がなくなったら【消滅】だろ」
取りすぎて全部なくなれば当然そうだろう。【欲】に憑かれた【生き物】は限度という物を忘れる。
一寸法師「姿形がなくなった所を見たことないから、わからないねえ」
【一寸法師】は、【香具夜】の【体】のパーツを使って、作った一番大きな物が【竜宮城】だと言った。『【創作】や【製作】を極めたいなら【ドワーフ】』が一番いい。
【竜宮城】は(【潜水型】の【巨大要塞】)だ。【香具夜】1人分では材料が足りない。
影千代「ふーん………捥いだ部分は『秒で【再生】』か。正に取り放題だな」
これは【獣神】と【女神】からの【ギフト】かもしれない、と影千代は言った。
遙「【毒】のほうか?義理堅い【獣神】はともかく、【女神】は余計なことしかしない」
遙は【女神】に個人的な恨みはない。しかし影千代は【女神】へ言いたい恨み言が山ほどあるので、この辺り遙は影響を受けている。
戒「【ドイツ語】だと【ギフト】は【毒】なんだったな………」
戒は遙の発言が影千代の影響で出たものとは知らないので、【ドイツ国】で生まれた遙は【ドイツ語】の意味で解釈したのだろうと思っている。確かに、『ある者』にとっては『強い毒性効果を発揮』するので【毒】と言っても間違いではないのだ。
ウラシマ「遙………お前と会って数時間だが、お前めちゃくちゃ口が悪いぞ」
【亜神】へ毒舌吐く【人間】初めて見た、と呆れていた。
遙「『ウラ伯父さん』は知らないのだったな。俺は【亜神】の【風神】と【雷神】の2柱と【契約】している。だから、特に【雷神】からは【女神】のディスをよく聞いている」
特に【雷神】と言っているが裏を返せば【雷神・鬼童丸】は、よく【女神・エレオノーラ】をディスっているということだ。
一寸法師「えっ!『対の2柱同時契約』!遙………キミ、【チャクラ】の量ぶっ壊れ仕様なのかい?」
今の遙は影千代を【実体化】させていることで、相当量の【チャクラ】を消費しているので正確な量がわからない。しかし、【分身】を【実体化】して【維持】し続けることができる時点で『あり得ない量』の【チャクラ】を保有している予想はついていた。
遙「うーん………論より証拠だな。ビビらないでくれよ」
遙は、左眼の眼帯を外す。遙は左眼を負傷して眼帯を付けているわけでも、眼帯キャラがカッコいいという【厨二心】からでもなかった。
遙が眼帯を外して、まず印象的だったのは遙の左眼が【ピジョンブラッドカラー】と呼ばれる『血を吸ったような真紅』だった。
ウラシマ「見事な【羅刹眼】!歴代【頭領】でもここまで深い紅は………」
【羅刹眼】というのは【頭領の証】とされる【瞳】を示す。【瞳術】には違いないが個々に【能力】が異なるので、【瞳術】としての価値より【頭領の証】という証明のほうを重視されている。
そして、【ウラシマ】は最後まで言葉を継げなかった。頭と背を地面に押し付けようとする【圧】がかかった。
遙の【羅刹眼】から漏れ出る【チャクラ】が『ひれ伏せさせよう』としている。
【一寸法師】、棗、燎、影千代は耐えている。【一寸法師】と影千代は涼しい表情で余裕が伺える。棗と燎は冷や汗を拭っている。
そして、戒、麟、瑤、勢都、月は気絶していた。
猪貍、鹿鳴、胡蝶の【煌兄弟】は猪貍と鹿鳴はひれ伏した完全服従ポーズで、胡蝶は恍惚とした表情で遙の【羅刹眼】を見ている。
唯一、平然としていたのは馨だけだった。
遙は眼帯を元の左眼につけ直す。
【羅刹眼】の【圧】から解放されて一同は、ほっと一息つく。
ウラシマ「ヤバかった!あとちょっと、遙が眼帯付けるの遅かったら………俺、土下座してた!」
遙は、ミスったと小さく舌打ちした。
ウラシマ「お前………舌打ちするほど俺に土下座させたかったのか?」
【ウラシマ】はまだ遙を正しく理解していない。
遙「【王】が自分の意思とは無関係に、圧倒的な力(ちから)で押さえつけられて、みっともなく土下座させられる姿って………いいと思わないか?」
一寸法師/ウラシマ「【ドS】だ………」
【一寸法師】は、『お祖父様』に似たのかな、と呟いた。彼の言う『お祖父様』とは【陵影璽】のことだ。
影千代「確かに………父上は、ちょっと【サドっ気】あったかな」
第一夫人は、しょっちゅう的(まと)にされてたよ、と影連の『遺伝子上は母』になる人物の名が上がった。
影千代「一番傑作だったのは、父上の【王爵叙任式】の第一夫人への塩対応!」
思い出したのか、影千代は腹を抱えて笑っている。
【陵家】の『影連の子たち孫たち』にとって、謎の貴婦人であった第一夫人と影璽との夫婦関係の貴重な情報だった。
遙「影千代、何だその話は?俺と【共有】されていないぞ」
遙が俺に隠し事するとはいい度胸してるな、とヤキを入れそうな雰囲気を棗が止めた。
棗「待て!【王爵】って何だ?響きからして【爵位階級】のようだが、聞いたことのない名称だ」
影璽は【軍人貴族】だ。【領地貴族】というのは【土地】を持った【地主】だ。【領主】と呼ばれることもある。【財閥貴族】というのは【事業主】だ。【経済】を回している。【政治貴族】というのは【政治家】だ。【軍人貴族】というのは、【軍人】だ。【階級】が【貴族階級】になっているので【軍人貴族】という呼び方になる。
影千代「今の【ドイツ国】は【国内独立国】が数多く存在している。父上が在籍する国、遙たちが生まれた国は【ローゼンクロイツ錬金国】という名の【都市国家】だ」
【都市】が【一国】としては扱われるのが【都市国家】だ。現在の日本では【琉球王国(沖縄)】と【蝦夷神聖国(北海道)】がこれに該当する。
影千代「父上は、ぶっちゃけ【ローゼンクロイツ錬金国】の【首席陛下】と同等の権力を持つ【軍人貴族】になる」
謎めいた人物だった陵影璽は、想定以上の大物だった。【都市国家】の【代表者(トップの人)】は【首席】で【陛下】の敬称が付くあたり、【国王】扱いされる権力を持っていると考えられる。
棗「影千代様、お祖父様は………陵影璽は『世界大戦』で【ドイツ国】へ派遣された【日本人軍人】だったはずです」
【忍】なので飛び抜けて大活躍したと想定しても、【外国人】には破格の地位である。
影千代「父上は、まだ【日本人兵】だった頃に私と御影の母・丙と結婚していたんだよ。母上も【日本人女性兵】だった。夫婦で【ドイツ国】へ派遣されていた」
【兵役】の為、夫婦には子がなかった。篁丙は、影連、影結兄弟を【代理出産】した女性なので影連の子たち孫たちにとっては、『生命を繋いでくれた大恩人』である。
影千代「父上たちの『兵役時代』の話は、私は勿論だが影連兄上たちすら生まれていないから、人から聞いた話だが………」
影璽、丙夫妻は、非常に有能な【日本人兵】と【ドイツ軍内】でも噂になっていた。両名が美男美女の目立つ容姿の夫婦だったこともあった。
ある日、影璽、丙夫妻は【ローゼンクロイツ錬金国】という【ドイツ国内】の【都市国家】の【大公爵】から呼び出しを受ける。【日本人】の影璽と丙には【ドイツ国】の【貴族】の1人で【公爵】に【大】が付いているから、けっこう権力を持っている【貴族】程度にしか思っていなかった。
しかし、呼びつけた張本人の【大公爵】と対面して知識の足りなさを知った。【ドイツ国】は【国】の代表は存在するが、『独立した政権を持つ都市』が複数存在し、それぞれが『一国と呼べる規模』の【政治力】【軍事力】を有しているようだ。しかし、影璽も丙も相手に対する知識が不足していただけで、交渉術においては『脳筋だけが取り柄』と思われていた【兵士】ではあり得ない博識を発揮した。
【大公爵】は【ローゼンクロイツ錬金国】の【首席陛下】の【弟君殿下】らしい。けっこう権力を持っている【貴族】どころではなかった。【首席親族】という呼び方をするらしいが、わかりやすく言えば【王族】だ。しかし、影璽は【風魔】、丙は【甲賀】の【頭領一族】の出身なので【国】の【偉い人】との対人には場慣れしている。臆した雰囲気のない夫婦を【大公爵】は大層気に入った。
それ故に【大公爵】は、どうしても影璽と丙の2人を取り込みたくて『夫婦離縁』を頼み込んだ。当然2人は即答で断ったらしいが、結果は一旦離婚して影璽は【大公爵】の一人娘と再婚して妻としその後丙と復縁したが、丙は【愛人】または【情婦】の立場だった。
一寸法師「ああ………この時はまだ【一夫一婦制】でしたね」
現在は【世界共通】で【α種】は【重婚可能】(むしろ重婚推奨)になっている。男女関係なく複数名の配偶者を迎えて良いので【重婚】だ。【α種】同士の結婚だと夫婦ともに複数の配偶者がいて、配偶者だけで【大家族】になる。子どもができたら【軍団】、孫までできたら【集落】と呼べそうな規模になる夫婦もあるが、【国家】が推奨しているのでその家族は【功労者】になるのだろう。
ウラシマ「父上を産んでくれた人が、妻として認められていなかったなんて………」
相当悔しいのだろう。爪が手のひらに食い込むぐらい拳を握りしめている。
影千代「この話だけ聞くと、そうなるか………周囲は【愛人】の立場の母上を正妻扱いしてくれていたよ」
影璽と丙の離婚は、【大公爵】の権力で無理矢理引き離されたと同情されたぐらいだ。今風に言うと『パワハラ上司、草!』といった所か。
遙「それに、【大公爵】の娘というのが………紫蘭伯母上の更に上を行く『我が儘自己中BBA!』だ」
紫蘭の子である猪貍、鹿鳴、胡蝶は穴があったら入りたい気分になる。
影千代「この子たちの母親………スゴかったね………」
【回生の術】で遙と記憶の共有があるので、影千代は遙を通して知っている。遙には始終、軽蔑されていた女だ。
棗「遙は、あのババアに会ったことあるのか?」
遙「俺は、影千代と『記憶の共有』がある。同じように洸も『御影と記憶の共有』があるから、酒飲んだ時によくBBAをディスったものだ」
知らない人間だから全然罪悪感も湧かない、と言っている様子からうかがえるのは、フィクション作品のヘイトキャラをディスる感覚だ。
一寸法師「洸………燎の三男だね。御影様の生まれ変わりだったね………彼とは僕もウラシマも会ったことがあるよ。でも、伯父とは名乗らなかったよ」
【マリア天比売】の【封印】の補強に【鬼道衆】を呼ぶらしい。【ニライカナイ】の場所は──────────正確には【ニライカナイ】に【封印】している【マリア天比売】の場所だ──────────絶対に知られてはならないので『目隠しをして』その場所まで連れて行く。
その封印の補強を【裏高野】に依頼したら、通常はこういった【機密事項】に触れる重大案件は【大僧正】【権大僧正】が行うのだが、やって来たのは見習いではないかと【階級】を疑う若者だった。
若者は自分は【権中僧正】なので、仕事は責任を持ってすると言ったが、【権中僧正】という【僧位】に【竜宮城の民】は納得いかず、軽んじられていると非難轟々だった。
しかし、若者は【夜狩省】トップの実印入りの書状と【裏高野・大僧正】【影比叡・大僧正】の【鬼道衆】首席・次席が連名で、向かわせた【権中僧正】は『実力は【大僧正】を凌駕する』といった内容の若者の【法力】を保証する文書を所持していたので、【一寸法師】が了承した。
そして、若者は【ニライカナイ】に【荒神】と【和神】の2柱の【亜神】を降臨させた。
【ニライカナイ】に派遣されたのは洸だった。彼を軽んじていた【竜宮城の民】たちは2柱の【亜神】を降臨させた若い【僧侶】に詫びるかのようにひれ伏した。
降臨した【亜神】は生まれは【人間】で【僧籍】に就き、日本国内に【仏教】を広め現在は【亜神】という【高次元】の【天上の神】になった経歴の異色の【亜神】だが、【人間】としての【弘法大師】【伝教大師】はあまりにも有名である。
ウラシマ「あれは腰を抜かすかと思ったほど………びっくりした」
【荒神】【和神】は、【信仰心】が高くなければその姿を見ることは叶わないと言われている。特に【南国】は土地に根付いた独自の信仰があるので無縁な話であった。
去り際に洸から言われたことがある。
一寸法師「【キリヒト天童】に気をつけろ………そう言われたんだけど、何を意味するかわからなかった」
忠告した洸もわかっていなかった。御影の記憶がそう言わせたかもしれない。
AI作成です。
眼帯を外した遙です。
膝上の銃は作中で遙が使用した【聖古式銃】です。
背景と銃はアイビスペイントをコラージュしました。
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