第漆章   ニライカナイ⑦島原の乱裏話〜勃発〜

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第漆章   ニライカナイ⑦島原の乱裏話〜勃発〜

 寛永14年(西暦1637年)島原半島──────────この日、代官が殺害された。世にいう【島原の乱】の開戦である。  数日後、【天草】で一揆が蜂起する。【一揆軍】を率いる大将は【天草四郎】だ。  遙「【島原の乱】の勃発は、まあ大体学校の教科書や歴史書に書かれている通りだ。【天草四郎】たちは【唐津・富岡城】を攻撃。【北の丸】を陥落させた。【一揆軍】はこのまま城を落とす勢いがあったが、『富岡城の本丸』は堅牢で更に九州の他の諸藩からの援軍が近づいていた為、撤退した。そして、島原半島を渡り当時は既に廃城となっていた【原城】に籠城した。ここで【島原のキリシタン】たちと【天草の一揆軍】は合流した」  この時の数、約3万7千人。 【原城】は、【キリシタン大名・有馬晴信】の【有馬家】の居城だった。キリスト教の祝別を受けており、廃城となっていたが軍事施設として使える状態だった。  時は藩主が【有馬家】から【松倉家】に替わった頃に戻る。この頃から領民が生活に困窮するするほど過酷を極めていた。元々、過剰な取り立てだったが、7年ほど前から更に酷くなって来ている。既に子がある家庭では新生児を間引くなど苦渋の決断を余儀なくされていた。  これ以上は新生児を間引く──────────これ自体も非情な行為だが──────────だけでなく働くことが困難な人物まで間引く対象にせざるを得なくなるほど追い詰められた領民たちの元に奇妙な3人組が現れた。  3人の中で最も年嵩の男は【森宗意軒】と名乗った。【軍学者】だという彼は、見聞を高めに外国へ渡り帰国ついでに【長崎】へ立ち寄ったと言う。2人の内、知性的な美男子を弟子の【由井正雪】、もう1人の体格の良い男を用心棒の【丸橋忠弥】だと紹介する。 【森宗意軒】は、自分は外国帰りの他所者だがこの領地の年貢は法外だと、領民たちの話をよく聞き同調してくれた。 【島原半島】には【有馬家】の元家臣だった者たちが【素浪人】に身を貶して残留していた。彼らは、藩主の【松倉家】を襲撃しようと企んでいたが、そこへ【森宗意軒】が現れる。  自らを【軍学者】と名乗る【森宗意軒】を怪しげな人物と、最初は警戒されたが彼の弟子の【由井正雪】が【豊臣秀頼】の【落胤】で用心棒の【丸橋忠弥】は【長宗我部盛親】の庶子【長宗我部盛澄】だと身分を明かした。 【有馬氏】は【関ヶ原】では【徳川家康】に付いていたが、【岡本大八事件】──────────【岡本大八】が【有馬晴信】を語って賄賂を受け取っていた──────────では【岡本大八】と連座で【有馬晴信】まで処刑──────────実際は切腹を命じられたが【キリシタン】は自害できない【戒律】の為、家臣が主の腹を切り介錯までをした──────────されている。ここにいる【素浪人】たちは【有馬晴信】の家臣で、跡目を継いだ【有馬直純】に使えるより【浪人】に身を貶す方を選んだ者たちだ。【徳川】に貢献した【有馬晴信】を処断した【幕府】に反抗意識を持っている。【秀頼の子】と【盛親の子】ならば、【反幕府】だと判断して【素浪人】たちは【森宗意軒】と話をする気になった。  【森宗意軒】は、【秀頼】には【(さだ)】という名の男児がいて彼の母親は【清姫】だと告げる。【清姫】は【石田三成】の遺児だ。その【貞】という男児は【革命】を起こす【旗印】となる。自分たちは【貞】を探しているが、何ぶん土地勘がないので探すのに苦労していると言うと、【素浪人】の1人が【寺子屋】の【大野先生】の倅の名が【貞】という名だと言った。 【寺子屋】の【大野先生】とは【大野秀吉】という名のおそらく元は、【武家】の出身だと思われる人物だと【素浪人】は【大野秀吉】の佇まいや所作からそう見えると語る。 【豊臣秀頼】は【大野秀吉】と名を変えて【長崎】にいることを【森宗意軒】たちは知らない。しかし、【由井正雪】は【大野秀吉】という人物が気にかかると【森宗意軒】にこっそりと告げ【素浪人】に居所を訊く。 【大野秀吉】は、【天草】で【寺子屋】を開いており、定期的に【島原半島】まで来て子どもたちに勉学を教えているらしい。その際に一人息子と2人の用心棒をが共をしているらしい。【素浪人】に次に来る日はわかるかと聞くと明日か明後日に来るはずだと返って来た。そしてどこへ行けば【大野先生】に会えるか聞くと、口之津村の庄屋の屋敷の広間を借りていると返答される。 【森宗意軒】は、【素浪人】たちに礼を言って酒代にと【金子】を渡すと連れを促して立ち去った。  遙「【森宗意軒】たちは、【秀頼】たちと接触することに成功するが………その日、庄屋宅で騒ぎが起こる」 【九州】で【秀頼】の監視を任されている【高坂甚内】と【鳶島甚内】は【五代目小太郎紅蓮・疾風】へ報告と今後の指示を仰ぐ伝書鳩を飛ばした。  遙「【甚内】たちからの報告は、年貢が未納になっている庄屋の元へ代官の家来衆が押しかけ、今すぐ年貢を納めなければ口之津村にいる若い娘たちを連れて帰ると脅していたらしい」  その場に居合わせた【秀頼】は、この村にはもう納められるものがないと説得する。  しかし聞く耳持たず、なければ妻と年頃の娘を代官宅へ奉公に寄越せと言った。明らかにを要求している。 【森宗意軒】一行も庄屋宅に居合せており──────────【秀頼】とその息子に接触する為、庄屋宅を張っていた──────────【代官の家来衆】と【秀頼】の間に割って入り、立ち聞きしていたことを詫び【代官の家来衆】へ、ものの道理をわかっていないと説教を始めた。【民】をここまで飢えさせては、近い内に彼らは生き長らえることができなくなる。そうなった場合は貴様ら【武士】や【代官】が田畑を耕して【藩主】【領主】をと屁理屈ではあるが、正論で言いくるめて追い返した。  庄屋宅で無体をする連中など【剣】を振るしか能がない。田畑を耕して農作物を育てるなど無理な話だ。  遙「ひとまず家来衆は去り、ここで【森宗意軒】一行は【秀頼】と【貞】と初顔合わせとなった」  この時、【秀頼】は【由井正雪】を一目見て【くノ一】と共に行方がわからなくなっていた息子の【由比(ゆい)】だと気づいたようだ。 【森宗意軒】は【秀頼】に共に来てもらえるか聞き、【秀頼】は先程の一悶着を見事に収めた【森宗意軒】の手腕を認め自身の一子【由比】も気になったので応じた。【貞】は勿論だが隠れている【忍】も同行を拒否されなかった。 【森宗意軒】は元【有馬家】の家来だった【素浪人】たちの元へ【秀頼】たちを連れて行った。  彼らは【有馬家】がかつて居城にしていた【原城】を住まいにしていた。今で言う【不法入居】だが、この時代では【荒れ寺】や【廃屋】など不法に居住する者は少なからずいて、犯罪行為を働かない限りは多少は目こぼしされている。 【素浪人】たちは、【森宗意軒】一行の人数が増えているのを見て、『探し人が見つかったか』と気さくに声をかけてきた。たった1度しか接点がないのに【森宗意軒】は、すっかり『人心を掌握していた』のである。  遙「ここで庄屋宅での悶着を話し、【素浪人】たちの反応を見た。こいつら【素浪人】は【脳筋】で、【代官】を始末すれば片がつくと思ってやがった」  ウラシマ「アホ過ぎるだろ。そんなもん取り替えがきく。【代官】は取替式の【フィルター】や【カートリッジ】のようなもんだ」  一寸法師「【ウラシマ】………ちゃんとわかっているんだね」  実は【一寸法師】は【ウラシマ】が一番これを理解していないと思っていた。因みに次点は(りょう)だ。  ウラシマ「兄者よ………俺はそこまで考え無しではないぞ」 【ウラシマ】はガックリする。  遙「【森宗意軒】は、それについても説明したらしい」 【五代目小太郎紅蓮・疾風】は『【風魔】の縄張り』である【箱根】から出ていないので、全て報告だが【森宗意軒】は話術に長けていたらしい。血気に逸る【素浪人】たちをなだめ、【庄屋】は『傷んだ畳のように取り替えがきくモノ』だと言った。全ての元凶は【藩主・松倉勝家】【領主・寺沢堅高】で、この者たちを排除しなければ領民の生活の安寧は来ないと語った。【森宗意軒】の話は【素浪人】には理解が難しいものだっただろうが、最後まで話を聞いて皆一様に頷いていたらしい。  棗「おい、その様子は【洗脳】されていないか?」  一寸法師「【森宗意軒】は歴史では謎の多い人物だ。彼は、この時既に【真魔十三忌将】だった可能性は高いね」 【森宗意軒】は【蟲将】、【蟲使い】だ。『人心掌握の早さ』や【庄屋宅】での『【代官】の家来衆』を『イエスマンにした』ことと言い、既に【真魔】となっていて『対象の体内に【蟲】を仕込んで操る』【異能力】を使っていると考えられる。  遙「これは、【霧隠】と【猿飛】が見たと言っていたことだが、この時既に【闇神(あんじん)・カオス】が【人間界】に【降臨】していたようだ」 『【闇神・カオス】降臨』に、【一寸法師】【ウラシマ】、燎、棗に緊張が走る。  棗「【島原の乱】は【カオス】の仕業なのか!」  遙「それについては、こいつに話してもらおうか」  遙は、同席させていた友人の(くゆる)に簡単でいいからと自己紹介を促す。  馨「ご挨拶が遅れました。【甲賀(ばん)家】の馨と申します。【闇神・カオス】と【篁丁(たかむらひのと)】のの息子です」 【カオス】と丁様の孫で良いであろう、と胡蝶(こちょう)がボソッとツッコむ。 【起源の大戦】の頃、【カオス】は『【人間】の少年』として【人間界】の【甲賀卍谷】にいた。【天罰】で堕とされたわけではないらしい。【原初の亜神】は自分の意思で【人間界】に自由に降りられる【特権】があるようだ。 【カオス】は、【人間界】のに興味を持ち、わざわざ【人間】になって近づいた。【カオス】が興味を持った少女が【篁丁】である。どういった交流があったかは、それを見ていない馨にはわからないが結果が丁は【カオス】の子を【処女受胎】して出産した。【亜神】は【神通力】の【塊】を【人体】へ流し【人型】に形成することができるらしい。それが【処女受胎】のカラクリだ。      一寸法師「彼の言っている通りだと、【起源の大戦】の原因の根幹そのものが間違って伝わっていることになるね」 【起源の大戦】は【闇神カオス】を【降臨】させる目的の【真魔十三忌将】とそれを阻止する【人間】との【戦争】だった。しかし、実際はその【カオス】が自らを【人間】という【低次元存在】に堕として【人間界】に降りて来ていたことになる。  一寸法師「【起源の物語】は不特定多数の人物が書いた『チェーンストーリー』だから、途中で解釈が変わっていてもおかしくない」  燎「だが、一の兄上………父上たちは【カオス】とその配下の【超魔】が『悪の認識』だ」  棗「(みずのと)お祖母様が【戦死】したから、戦っていた相手が【悪】になるかもな」  当事者ではない者の目から見ると、また別の解釈になる。  影千代「癸様は、【真魔十三忌将・巴御前】と一騎打ちの末に討ち取った。その直後に【神無(かむな)】という『卑劣クソ野郎』に背後から【急所】を刺され、その傷が致命傷となった」  影千代は、【甲賀陣営】で戦闘をしていたので【甲賀望月家総帥】であった篁癸が【巴御前】と熾烈な一騎打ちを制した現場にいた。そして、直後の【神無】の背後からの急襲という卑劣行為も見た。  影千代「【神無】は、その後………その場に【甲賀組】に全身串刺しにされて息絶えた………はずだったが………」  それら全てなかったことのように【神無】は生きていた。そして、【神無】の仕打ちのせいで【一寸法師】と【ウラシマ】の母・(きのと)は自決した。 【神無】の名を聞いて、【ウラシマ】は勿論、【一寸法師】にも【憎悪】に満ちた【殺気】が漂う。  一寸法師「話が脱線したみたいだね………【島原の乱】の話の続き………聞かせてもらえるかな」  言いながら、【一寸法師】は【ウラシマ】が自身の膝上で握りしめて震わせている右拳に小さな手を包むように乗せた。そうすることで互いの怒りの感情を抑えようとしていた。  遙は、影千代の頭を張り倒す。【神無】の名は【禁句】だ、とその一撃が物語っていた。  うっかり口を滑らせてしまった影千代は、張り倒された頭に手をやりながら「ごめんね」と言ったのを【一寸法師】と【ウラシマ】は「もう大丈夫」と頷いて返した。  遙「馨、よろしく」  馨「わかった。【カオス】が【島原】に降りたのは、かの地が【混沌】に満ちていたから」  燎「謎かけみたいだな」  棗「【甲賀伴家】は『インテリ揃い』だからな」  頭脳明晰な者の言動が理解できずに燎と棗は、既に思考を放棄している。  こいつら、少しは頭を働かせたらどうだと言いたげに遙はジト目を向けている。  一寸法師「どうやら僕たちは考え違いをしていたようだね。【カオス】は『【混沌】を【神】』だと思っていたけど………そうではなく『【混沌】のある所へ現れる【神】』だったようだね」  ウラシマ「兄者!『混沌に満ちていた』ってひとことだけで、それを理解できたのか!」 【ウラシマ】は【一寸法師】を尊敬の眼差しで見ているが、【一寸法師】は流石に弟たちが思考を人任せにし過ぎて少し心配になる。  馨「【カオス】と同じように【光神・コスモス】も【降臨】していました。【カオス】は【カトリック】が信仰する【神・ゼウス】、【コスモス】は【聖母マリア】と勘違いされました」 【亜神】の【上位存在オーラ】は一目見た瞬間、【人間】をひれ伏させたらしい。 左:燎/右:棗    
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