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第漆章 ニライカナイ⑨漂泊の者
【一寸法師】と【ウラシマ】の偽名にまつわる話です。
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馨から【闇神・カオス】【光神・コスモス】が【降臨】した経緯を聞いて、燎と棗は【コスモス様】は意外と【脳筋】だな、と言う。
【一寸法師】は燎、棗とは真逆の考えだった。
一寸法師「【コスモス様】って、【秩序の神】でしょ。【秩序】とか【正義】って、だいたい【戦(いくさ)】が絡んでくるから、むしろ好戦的なタイプなんじゃないかな」
ウラシマ「【香具夜】を【聖骸】に変えたのは【コスモス様】だったんだな」
遙「【キリシタン軍】は【聖骸】から【創造】された【武器】【防具】で【幕府軍】に対抗した」
【原初の亜神】である【闇神・カオス】と【光神・コスモス】は、【人間界】に影響を与える【混沌】と【秩序】の概念を司るので、表立って【人間】に協力できない。2柱ができることは、【コスモス】が【聖骸】から【装備品】を【創造】して【光】と【秩序】の【加護】を【付与】し、それを【カオス】が【転移魔法】で【沖永良部島】の【ニラの島(ニライカナイ)】から【島原半島】の【原城】の【武器庫】へ【転移】させることが許容範囲のギリギリであった。
既に【コスモス】が【開戦】予定の前夜に【代官宅】を木っ端微塵に押しつぶしてしまうという【フライング】をやらかしているが、【カオス】には想定内だったようだ。【カオス】に従っている【森宗意軒】や彼の【眷属候補】たちは、元よりストッパー役の期待はしていなかった。【コスモス】は単独行動ではなく【人間】を連れて行ったので、そこに居合わせた【人間】の仕業として歴史改変可能である。
馨「【カオス】は、【代官】が【庄屋】の【妻女】を死に至らしめたので、【キリシタン軍】の【有馬家】の元家来衆たちが【代官宅】を襲撃したことにしました」
ウラシマ「それはアリなのか?………【焙烙玉】を投げ込んだ………と言ってみても、かなり無理があるぞ」
遙「【甚内’s(高坂と鳶島)】の報告では、【キリシタン】たちは『【神】の怒り』と言っていたようだ」
実際に【神】が怒って【天誅】したので正しいのだが、けっこう【人間界】の事象に関わっている。もっとも、初手で【コスモス】が大盤振る舞いの手助けをしたので、その後は直接的な援護はせず、【装備】や【兵糧】の補給を援助することに徹していたようだ。
馨「【亜神】に【天罰】を与える【全能神】は、元は【原初の亜神】で【カオス】と【コスモス】は知らない間柄ではありません」
要は、昔馴染みのよしみで1回だけ見逃してやるということだったのだろう。
一寸法師「その話の流れだと………【漂泊の者】を【召喚】したのは、【カオス】でも【コスモス様】でもないみたいだね」
1回やらかした【コスモス】に2度目はない。これは【対】になる【カオス】にも言えることで、彼らに許されているのは【物資補給】などの補助で、それ以上の行為は【越権行為】となるのだ。
一寸法師「僕は、【コスモス様】配下の【天空人】かと考えていたけど………」
【光神・コスモス】の配下は【天空人】という【翼】を持つ【翼人】である。ぱっと見【天使】と間違われる特徴だ。
馨「既にやらかしているので、【神】の配下を動員するのは禁じられていました」
これは、【全能神】はけっこうオコだったのでは、と気づいたがそこには触れず【一寸法師】は【島原の乱】の時にその場にいた【神】の配下は【カオス】配下の【森宗意軒】とその【眷属(この時は候補)】だったのか、と納得した。
歴史では、【島原の乱】では【総大将・天草四郎】【軍師・森宗意軒】として記録があるので、最初から関わっていた【カオス】の配下は続投されたようだ。
遙「マリアを【江戸時代】へ【召喚】したのは、【女神・エレオノーラ】だ」
棗「マリアという名なのか【漂泊の者】の名は」
名前から、【女】であることは間違いない。【治癒系異能力者】は女性率が高い。前情報から、【女】だろうとは予想していたが。
遙「本名かどうかわからない。【甚内’s】の報告では『マリア』と呼ばれていたらしい。しかも、【聖母マリア】の『使徒・マリア』だそうだ」
燎「【聖母】もマリアで【使徒】もマリアか………紛らわしいな。【異能力】持ちは誰彼構わず『マリア』と呼ばれるんじゃないのか?」
燎の言っていることは一理ある。報告では、後にも先にも【漂泊の者】は、少女1人だけだったので事実確認の仕様がない。
ウラシマ「【女神】って………余計なことして足引っ張ってるだけじゃないのか?」
言葉にすることが憚られたので誰も言わなかったが、とうとう槍玉に上げられてしまった。
一寸法師「【ウラシマ】ダメだよ。義理の母上に対してその言い方は………」
燎「兄上、お姑さんを蔑ろに………え゛義理の母上!」
言葉を途中で止めて聞き返す燎と、どういうこと、という表情で棗と遙は顔を見合わす。
一寸法師「ああ………言ってなかったね。【ウラシマ】のお嫁さんの【玉手】さんは【女神・エレオノーラ】の【娘】なんだよ」
つまり【ウラシマ】は【神の子】の配偶者ということだ。
一寸法師「でも、【玉手】さんはポンコツじゃないよ。義父上に似たのかな………まあ義母上に似なくて良かったよ」
でも顔は義母上に似て美人だから、そこだけは【女神】のお手柄だね、といい笑顔で【女神】ディスをする。
ウラシマ「兄者が一番ヒドくね?」
遙「ウラ伯父さんは、お嫁さんに合わせて偽名を付けたのか………」
遙は【ウラシマ】の偽名に納得したが、違うと否定された。
ウラシマ「話すと長くなる………脱線していいか?俺と兄者は【過去】へ【転移】した。そこで兄者は【一寸法師】、俺は【浦島太郎】だった」
【御伽噺】の【ヒーロー】と思われている両名は実在の人物らしい。しかし、現実は【御伽噺】と大きくかけ離れ【一寸法師】と【浦島太郎】は当時の【大和朝廷】を相手に度重なる【戦争】をしていたそうだ。
遙「【浦島太郎】は【亀】を助けて【竜宮城】で【ハーレム王】になったのではなかったのか!」
遙の知る【御伽草子・浦島太郎】は、あまり子ども向けなストーリーではないようだ。
馨「【竜宮城】から戻ったら、出身地の村は【無法地帯】で【世紀末覇者】になったのではなかったか?」
馨のほうは、ハードボイルド系だ。どちらにも【玉手箱】が出て来ない。
棗「【玉手箱】どこ行った!【浦島太郎】つったら【玉手箱】だろうが!」
【玉手箱】が主人公のような言い草だ。
燎「【ハーレム王】か………男の浪漫だな!」
燎は【ウラシマ】に『イイねポーズ』をする。
月「おじさんたち………わかってないなあ。【浦島太郎】は【亀】を助けて【竜宮城】で接待を受けて、おみやに【玉手箱】をもらったんだよ。そして村に戻ると、【無人島】になっていたから【玉手箱】を開けて『ドッカーン』!だぞ」
だいたい合っているが、接待なんて言葉をどこで教わったのか問いつめる必要がある。
瑤「最後の『ドッカーン』って何だよ………それに、接待って………子ども向けの本にはそんなオトナの単語は出て来ないだろ」
月も瑤も子ども向けの本で話を知っているようだ。月が接待と言ったのは酒を飲んで宴会することを接待と思っていたらしい。
勢都「月くん、それは接待じゃなくて【おもてなし】っていうんだよ」
とりあえず、子どもらしいマトモなことを言う勢都に大人たちは、ほっとしたが接待を【おもてなし】に言い換えられるということは意味をわかっているということに気づいていない。
ウラシマ「遙………子どもに変な言葉覚えさせるなよ」
と【ウラシマ】が注意すると、棗が月(ユエ)は遙の子ではなく朔の子だと訂正した。
ウラシマ「朔というと………【山の民の王】の生まれ変わりか!」
朔が【先代頭領】だったことを知らないので、最初の【前世】のことを言う。
ウラシマ「実を言うと、俺の【転移先】は【神話時代】の【日本】だったから【闇嶽之王】本人と面識がある」
遙は、これは【島原の乱】の話を中断して聞いたほうがいい話だと判断した。
遙「伯父さんたちは、【過去】へ【転移】して【漂泊の者】になったのか?」
一寸法師「僕と【ウラシマ】が【漂泊の者】と呼ばれる【存在】であることは間違いないよ。けど………僕たちは、正確には【チェンジリング】に該当する事象だと思う」
【チェンジリング】とは、【妖精の赤ちゃん】と【人間の赤ちゃん】が取り替えられるという現象のことを指す。『【妖精】の悪戯』行為なのだが、されたほうは迷惑だ。
【一寸法師】と【ウラシマ】は【入れ替わり】で【過去】へ【転移】してそこで【一寸法師】【浦島太郎】として過ごした。そして『元いた世界』へ帰還を果たした。それでは【帰還の者】というのが正しいが、【異なる世界】から【転移】して来た者を【漂泊の者】と一括りにしている。
そこで、気になるのは本物の【一寸法師】と【浦島太郎】の存在だが、【大和朝廷】との【戦争】で既に【戦死】していた。故に、この事実を隠す為に【異なる世界】の【人間】と【チェンジリング】した。
遙「【大和朝廷】か………【古代日本】の【大和朝廷】は、【朝鮮半島】からの侵略者だったという説があるが………【戦争】していた相手が【朝鮮の使節団】という可能性は?」
歴史上、【大和朝廷】は【百済】と連合して【新羅】【高句麗】の【攻略戦】をしていたとなっている。こういった背景から【大和朝廷】が【百済国人】説がある。
一寸法師「僕たちが【古代日本】で戦った相手は【朝鮮使節団】だよ。当時の【大和朝廷】が【朝鮮使節団】で構成されていた。まあ流石に【大王】は【日本人】だろうけど………【九州】から【近畿】まで距離があるから確かめようがなかったね」
【一寸法師】が相手を【朝鮮使節団】と言った決め手は【武器】だ。【古代日本】の【武器】は【石器】だ。しかし、【古代韓国・朝鮮】では【鉄】が産出していたので【鉄器】を【武器】にしていた。敵兵全員が【鉄製】の【武器】を使用していたことから【朝鮮使節団】で間違いないと確信した。
ウラシマ「あれはマジでチートだな。こっちのエモノの【石器】は【打突】【殴打】の2択しかないのに、【鉄器】は【打突】【殴打】【斬撃】【切断】と倍の選択肢だ」
【鉄器】の【斬撃】は脅威だった、と【ウラシマ】は言った。【一寸法師】と【ウラシマ】に『【現代日本】の知識チート』がなければ、一方的に蹂躙されて【戦闘】にならなかったぐらいのアドバンテージ差が【石器】と【鉄器】にはあったらしい。
一寸法師「けど、僕たちには【現代知識】があったからね………【十手】と【護手】(十手の引掛け部分がないもの)の【二刀流】で敵の【武器】をへし折った時の相手の顔が傑作だったよ」
どうやら【武器】だけでなく、【心】までへし折ったらしいなと遙は【一寸法師】の表情から読み取った。
遙「【転移】の原因はわかっているのか?」
【陵家】では、消息不明の【影連】の長男から四男、長女の5人は【死亡】したものと思われていた。【チェンジリング】で迷惑を被っているので、原因は追求しなければならない。
一寸法師「【時間】を【支配】する【権能】を使えるのは、【生神】と【死神】だよ」
【チェンジリング】で【一寸法師】や【ウラシマ】たちを【過去の世界】へ【漂流】させたのは、【生神】と【死神】のようだ。
一寸法師「【龍宮伝説】って知ってるかな?【龍宮】を侵略しに来た【鬼】と【龍宮の民】が【戦争】する話なんだけどね」
【龍宮の民】とは【浦島太郎】と妻の【乙姫】そして【竜宮城】に住む【古族・人魚族】たちのことだ。
一寸法師「この【鬼】は【大和朝廷】を指しているんだけどね」
燎「一の兄上、【龍宮伝説】に【一寸法師】がどう関わっているんだ?」
棗「そうだぞ。【玉手箱】が出て来ないじゃないか!」
遙「棗はさっきから、【玉手箱】が気になるようだな………【玉手箱】は、おそらく【乙姫】を指している」
ウラ伯父さんのお嫁さんの名前は【玉手さん】なんだろう、と遙は言う。
馨は、遙も気づいたのか、という表情をする。
馨「【乙姫】の名前は【玉手さん】だと思いますよ。【浦島太郎】は【玉手箱】を持って故郷へ帰ったのでしょう?」
【玉手箱】は【乙姫】を指し、【浦島太郎】は故郷へ花嫁を連れて帰ったというのが【御伽噺】の【浦島太郎】の結末である。
棗は、そう言えば【玉手さん】という名が出て来ていたなと思い出した。『流行りの擬人化』かと言っているので、理解したかどうか怪しい。
燎「【乙姫】と【玉手箱】の関係はわかった。それで、【一寸法師】はどう関係するんだ?」
瑤「燎伯父さん、知らないのか?【一寸法師】の両親のこと………【大和朝廷】の偉い人の子だったけど親が敵対していたおっさんを陥れて、追放されたんだよ」
それは、【お爺さん】のほうの素性である。【お婆さん】のほうも【上位貴族】の遺児だ。【お爺さん】のほうの因果関係で、【一寸法師】は【大和朝廷】と対立関係にあると言える。
瑤の説明で、燎と棗は納得したようだ。
一寸法師「因みに、【御伽噺】で一寸法師を大きくした【打出の小槌】は、【魔剣】とか【神剣】とかが作れちゃう【錬成の槌】だよ」
【槌】を打ち付けると【錬成陣】が展開されるらしい。【MI(神話)】クラスか【GE(創世)】クラスと考えられる【アーティファクト】である。
【龍宮】に現れた【一寸法師】は【朝廷軍】の【鉄製】の【武器】を壊しまくって、敵兵を戦意喪失させた。
【一寸法師】は【お爺さん】の一族を追放した【大和朝廷】に、『一泡吹かせてやりたい』と考え【大和朝廷】と交戦中の【龍宮】と手を組もうとして【竜宮城】へやって来た。そこで、弟と再会する。【チェンジリング】で【浦島太郎】が【漂泊の者】と入れ替わっていることは【龍宮】側は承知している。『本物の【浦島太郎】』が戦死して【龍宮】は降伏するぐらいなら、【竜宮城】諸共自爆する気だった。それを【亜神】が【神の権能】で救ってくれたので、【ウラシマ】の【チェンジリング】には【龍宮】が関わっているのだ。
【ウラシマ】から来訪者は『元の世界の兄』だと聞いた【龍宮】側は、【一寸法師】を仲間に受け入れた。
一寸法師「僕のほうも『本物の一寸坊』は【暗殺】されたそうだよ。【大和朝廷】は【お爺さん】の一族を追放したけど、完全に消してしまいたかったようだね」
【お爺さん】の親が敵対していた【貴族】を陥れたのが【朝廷】にバレて一族郎党追放された、という話だが陥れられたのは【お爺さん】の親のほうではないかと疑惑が生じる。本物の一寸法師は出家して【一寸坊】と名乗っていたらしい。【一寸坊】が何者かに【暗殺】されて【チェンジリング】で【漂泊の者】と入れ替わった。入れ替わった後は、【一寸法師】と名乗り旅に出ると言って【お爺さん】【お婆さん】の元を離れた。
燎「ウマイこと、兄弟同じ【時代】に【漂流】したもんだな」
ウラシマ「俺と兄者はな………姉上(長女)が【漂流】したのは【戦国時代】だ」
一寸法師「【鶴姫】っていうんだけど………知ってるかな?」
影連の長女が【チェンジリング】した【鶴姫】は【和製ジャンヌ・ダルク】と呼ばれる。婚約者の青年の敵討ちに【戦国乱世】に【鎧】を付けて戦場に出たとされる、波瀾の生涯を送った女性だ。
遙「【瀬戸内海】で【村上水軍】を率いていた【女海賊】………」
【五代目小太郎疾風】が【鶴姫】と面識がある。
遙「【チェンジリング】した【漂泊の者】だったのか!どおりで、【戦国時代】にないはずの【レンコン短筒】を所持していたわけだ」
【レンコン短筒】とは今で言う【リボルバー式拳銃】のことだ。【中世】の頃は【ライフル】を【長筒】、【拳銃】を【短筒】という言い方をしていた。今と違い、1発撃つごとに装弾する必要があった。
月「なあ………伯父さんたち、交通事故とかで死にかけた?」
突拍子もないことを聞いて来たが、遙には質問の意図が理解できた。
【ファンタジー小説】のオーソドックスな設定だ。【交通事故】で死亡した【主人公】が【神様】の部屋で、『貴方はこれから異世界へ転生します』といった説明を受けた後、『目覚めたら生まれたばかりの赤ちゃん』という経緯を経たのかと月は聞いている。
一寸法師「流行りの【異世界モノ】だね。………そうか!僕たちって【異世界転移】?【異世界転生】?どっちになるかわからないけど、『リアル体験』したよ!」
【異世界モノ】に理解がある【一寸法師】は、【異世界ファンタジー】愛読者確定だ。
月「俺も、【異世界】行って帰って来た!」
その話聞きたいな、と【一寸法師】は言う。見た目が月より少し年上の同年代でも中身はいい年齢した【オジさん】だが、子どもの話題について行けている。
【一寸法師】は、小難しい話は終わったから後ヨロシクと【ウラシマ】に丸投げして、月(ユエ)の【異世界往復】の話を聞き出している。その話に興味がある瑤と勢都(せと)もワクワクが止まらない表情をしていた。
丸投げされた【ウラシマ】は、何が聞きたいか問う。
遙「伯父さんたちは、それぞれ別々に【漂流】したのか?」
ウラシマ「ああ、そうだな。兄者とは別だった。姉上(長女)と俺は、【風魔の里】を出た後、同居していたから俺と姉上は一緒だった」
そして、【漂流】した所には【ウラシマ】1人だけだった。
ウラシマ「薄情と言われそうだが………姉上のことは、ほとんど心配していなかった。あの人、要領いいからどこに飛ばされてもウマくやっていく!」
【チェンジリング】は『死亡した人間』と入れ替わる仕組みかもしれない、と遙は考える。
【生神】【死神】がなぜ【生命神召喚】で【死者蘇生】をやらなかったのか疑問があるが、これには仮説が2つ思いつく。①【死者蘇生】をしても、エンドレスで【死亡】と【蘇生】を繰り返す結果になる。②【未来の世界】から【漂泊の者】を連れて来て『知識チート』を期待した。
遙は、この仮説を【ウラシマ】に話した。
ウラシマ「………多分、それ両方あり得るな。さっきも言ったが、【武器】の性能の違いで大差があった。俺も、【石器】で【手裏剣】とか【ブーメラン】とか考案したが………」
遙「それは失敗だな。【石】で【投擲武器】を作るなら、紐で手元へ戻す仕組みにしなければ………特に【ブーメラン】は、投げて戻って来る特性が損なわれる」
適切な指摘に【ウラシマ】は舌を巻く。正に【ブーメラン】は投げっぱなしで戻って来なかった。
偶然だったのか【神】の思し召しかわからないが、【一寸法師】が【龍宮】へやって来て彼が所持していた【打出の小槌】で【十手】を量産できたから【龍宮】は滅びなかったと【ウラシマ】は感謝している。
遙「伯父さんたちは、【伝説】に登場する【英雄】と入れ替えられたわけだが、【漂泊の者】になるのか、【転生戦士】になるのかどっちなんだろうな」
実は両方になる。【過去】の世界へ【漂流】した【漂泊の者】でそこから『元の世界』へ【帰還】している。【帰還】した時に【ウラシマ】たちは【過去】に【漂流】して【龍宮伝説】を実体験したことが、【前世の記憶】として【引き継ぎ】されているので【回生】で生まれ変わったことになっている。
【過去】へ【転移】させたのも、『元の世界』へ【帰還】させたのも【亜神】なので辻褄が合うように【編纂】したのだろう。
遙「【島原の乱】で【転移】させられた【マリア】は【寛永15年】の【原城】で死んだ………【女神】の都合で【転移】させられて死んだ場合は『こっちの世界』ではどうなっているのか調べたが………行方不明で身内の者が探していた」
まだ【警察】には届けていないようだが消息を絶って3日経過していた。
棗「【異なる世界】と言っても、【過去の世界】だろ。そもそも、【時空】を超えた【漂泊の者】は基本ステータスが異常に高い。それこそ殺しても死なないくらいにな」
棗は、戒と麟を見る。実は、この2人は【未来】から【漂流】した【漂泊の者】である。【時空】を超えたせいで【先祖返り】して【ヴァンウルフ】に【変異】した。戒は元は【人狼】──────────【神狼(フェンリル)】も【混血】の場合は【人狼】扱い──────────で麟は【ヴァンパイア公(ロード)】だったので、【存在進化】して【上位種】になっている。確かに、『殺そうとしても簡単には殺せない』種族だ。
燎「『殺しても死なない話』より、オカシイ部分があるだろう!」
燎は、【タイムラグ】を指摘する。【島原の乱】は約3カ月の【戦争】だった。年越しを跨いでいるので年が1年進んでいる。そして、遙が【密偵】や【情報屋】を使って調査した結果、【島原の乱】に乱入させられた【漂泊の者】の少女は、【現代】の【女子高校生】で行方不明になって3日経過している。日数にズレがある。
勢都「燎伯父さん、それは『浦島効果』って言われる現象だよ」
勢都の言葉に燎が【ウラシマ】を指差し、【ウラシマ】も自身を指差している。
遙「いい年齢したオッサンが、ベタなボケしやがって………」
棗「この2人が私の兄とは………情けないぞ」
遙と棗の呆れ顔がそっくりである。
一寸法師「【ウラシマ】も燎も子どもたちの前で恥ずかしいことしない!」
子どもたちの中に遙も含まれていることに、遙は気づいていない。
?「【時空転移】に『時間のズレ』は『必須条件』じゃ」
会話に乱入して来た人物に遙は、なぜこの者がここにいるのかと疑問を持った。
語尾が『のじゃ口調』の美少女は、【二次元】ではだいたい【ロリ系】のお約束を装備している。
遙「なぜ【亜神】がここにいるのか訊いても?」
そこにいたのは、【亜神】の中でも【特殊】な【召喚神】と呼ばれる【生命神・イワナガ】だった。
上:勢都/中央:月/下:瑤
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