4人が本棚に入れています
本棚に追加
うんうんと強く頷く青年。
「商売か。確かに、水不足の町人達に水を売り捌くのは儲かりそうだ。きっと死に物狂いで買いにくる」
「値段を釣り上げて、足りない分は、天使の羽と引き替えだとか言い出すんだ」 青年の言葉を聞いて、天使は涙ぐむ。「関わらないで町を出たいけど、見過ごせない」
「難儀だな。それが天使の性分か?」
天使は二度頷いた。慈愛と平和を求める種族なだけに、人が悪行を働く事が許せないと同時に、困って居る人間を見過ごせないのだ。
「分かりやすい図だ。悪は伯爵、困っているのは町人、そして解決に動けるのは俺と君だ」
「手伝ってくれるの」
半信半疑で聞き返す。
「君一人では捕まるのが落ちだろう。これは、借しになるな」
「いつか。返す。期待しないで」
あげていた顔を、落として溜息混じりに呟く。
「恩はいくらでも売っておくものだ。さて、行動だ」
トランクからロープを取り出す。
「なにするの。いきなりそんなもの取りだして」
言いながら、何かに気づく天使だが、自分の思い込みだろうと胸中で否定して、青年を見ていた。
「決まっているだろう」
ゆっくりと天使に近づいていく青年。 天使は、青年に助けを求めた事を、どこかで後悔したのであった。
最初のコメントを投稿しよう!