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照りつける太陽が、大地に降り注ぎ、新緑が風に靡く季節が到来した。
旅には良い気候だが、肌を焼く暑さは強敵だった。最近は雨も降らないせいか川の水が干上がり、魚の死骸が水溜まりに浮いている。
取り立てて、何もないこの街道の先には、小さな町が存在すると人づてに聞いた。そこ迄行けば、水も手に入るのではないかと言うことらしい。周りの人間は、それを求めているのか、まだ、見えることのない町を目指して歩いていた。
その中に、妙な服装の青年が混じって歩いていた。このクソ熱い中、黒いスーツを着込み、さらには赤いレザーコートを羽織っている。また奇妙なのがそんな格好をしているにも関わらず、顔色一つ変えないという点だ。右手に旅行用のトランクを持ち、ひたすら正面を見て列に混じって歩いていた。
そんな人の群を蹴り散らして、一騎の馬車が通り過ぎた。馬車の扉に名家の紋章が張り付いていたが、とりたてて気にする人は居なかった。やがて、町が見えてくる。
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