偽りの黙示録

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その老父の元に集まり、天使の少女を囲む。そして、ロープで縛り、長の前に出した。 「さあ、天使だ!水をくれ!」 「えぇっ。あたし水なんかうみ出せないよ」 無茶苦茶だ。その一語につきる。青年はそう思っていた。水を求め、この場所へ行き着き、だが水は買い占められ、水が無いとわかった途端雨乞いをしようと言いだし、それを長に止められ、天使を見つけろと言われ、見つけだし、と 「イレギュラーが多い…」 そんな青年の言葉をかき消す歓声が轟く。 「天使よ、私たち人間の為に、水を呼び起こしたまえ」 長筆頭に、現れた兵士が、天使を立たせる。 「どこ、連れてくの。あたし何もしてないよ」 天使は天使で状況が飲み込めていない。 人々は状況の分からない天使を無視し、祭壇へと連れていく。 祭壇に乗せられた天使の名を、長が聞く。 「待って、むちゃくちゃよ。あたしを供えても、雨は降らないのに」 天使は、泣きそうな声で訴えたが、誰一人、その言葉を聞こうとしない。それどころか、無理矢理祭壇に上げられた。「さあ、天使よ祈りの言葉を」 「知らないよそんなの」 天使はついに泣き出した。 勿論、周りがそれを許すはずもない。 「そうだ!希望を求めて来たのに!」 「それなのに!水は無い!」 「買い占められただと!ふざけるな!」 人々の怒りは納まらない。それこそ、人を殺さねば納まらないくらい白熱している。 「まあ、待つのだ、皆の衆。みずを買われた、伯爵様が天使を探しているとの事。もし、見つけることが出きれば、水も分け与えて貰えるのではないか」 長は真顔で言い募る。 「勿論、天使はそのまま、生贄として使えるよう話はついている」 「本当だな!」 「天使だ!」 「天使を探せ!」 人々は天使を探すため町中を走り回る。その様子を見て思う 「…ふむ…」 天使など一朝一夕で見つかるとは思わんが… 人々は、水欲しさに、行き交う娘や少年、老婆老翁に至るまで、天使の印である、首筋の痣を探し回る。「クソ!何処だ!」 全てを見失った人々は、暴徒以外の何者でも無かった。血走った目で天使を探し、中には服を破り関係の無い所まで確認する始末である。それでも人々の暴走は止まることはない。 その時だ、一人の老父が隠れていた少女の手を引いて叫ぶ。 「居たぞっ、天使族の小娘だ」 「はなして、あたしを生け贄にしても、雨は降らないわ」
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