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「嘘を付け!」
「水を!雨を呼べ!」
「神に血肉を捧げるのだ!」
次々と勝手なことを言う人々。もはや何が目的か分からない状態だ。
天使は、視線だけで助けを求める。この混濁した中で、唯一、群からはずれた青年が目に入るやいなや、破れかぶれで、叫ぶ。
「助けてっ」
「何故だ?」
青年から返ってきた言葉はそんなものだった。表情を変えず、その様子を見ている。
そんな素っ気ない答えに、天使は返した。
「死にたくないの」
「何故死にたくないんだ?」
また、そう返す。何故?と
「まだ、やることがある」
天使は、兵士達に押さえつけれたまま青年へと言葉を投げつけた。
「そうか。では、三度問おう。君を助けたら、何か報酬はあるのか?」
「ほ、ほうしゅっ」 答え掛けた天使の髪を掴み、強引に祈りの言葉を読ませようとする人々、天使は考える余裕すらなくし、青年の問いに応じた。
「お金はないけど、あたしができることなら、やるから。助けて」
青年は少し考える素振りを見せ、頷くと
「その言葉、忘れるな」
青年はそう言うと、ゆっくりと天使達の方へ歩いていく。 ざわりと騒いでいた人々の視線が、青年を向いた。
天使と彼の会話に今更気づいたように。
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