偽りの黙示録

7/53
前へ
/593ページ
次へ
青年が祭壇に触れる。正確には撫でるだが 「そこにいると危ない」 沈黙後に、呟かれた言葉に周りの動きがとまる。天使は、怪訝な顔つきで人々と青年を一瞥していた。 その時だった。青年が撫でた所を中心に、祭壇にヒビが入る。ヒビは徐々に大きくなり、とうとう ピシピシピシ…ピシ…ゴシャアァァァン! 祭壇は崩れ、瓦礫の山に変わった。 突然の出来事に人々は慌てふためき、場は混乱が支配した。そんな中、青年は天使の少女を抱き抱え、無表情のままその場を離れた 「なにしたの」 理解できずに、抱えられてる少女は、目を点にした。 「教えたら報酬は増えるのか?」 表情一つ変えぬまま青年はそう返した。もちろん足を止める事は無い。 「いいよもう、聞かないよ」 報酬、その言葉を聞いて、天使は口を噤んだ。 「懸命な判断だ」 あの場から逃げ切ったと思ったのか、天使の少女を下ろした。 地面に落とされた少女は、なんとか自分でロープを解こうとしたが、無駄な足掻きだった。ロープが解けるなら、最初からそうしている。
/593ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加