序章

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『リョウタ!』 キミが慌てたように駆け出す。今日は久しぶりのデートの日。向かいの信号にいるキミが僕を見つける。信号を渡るために走り出すのを見て、僕の頬が自然と緩む。僕の前で足を止めたキミが並んで歩き出す。少し躊躇ったけど、肩を揺らすキミの手をそっと握った。 『え?』 と、小さな声を漏らしたキミが僕を見てるのに気づいているけど、知らないふりをして歩く。目を見開いてるキミに視線を向けると、キミは慌てて視線を逸らした。手を繋ぐのは初めてじゃないのに、いつもキミはそんな風に驚いて、可愛い顔を見せてくる。 『ねぇ』 呼び掛けてもこっちを見ない。けど、白い肌が赤く染まってる。それに耳はもっと赤い。握った手も少しだけ温度が上がった気がする。 『ねぇ』 もう一度呼び掛けたけど、じろりと睨むような目で僕を見上げる。 分かってないな…。その顔が好きなのに。僕のイタズラ心は押さえられそうにない。
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