雨乞い

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 それは年と時が過ぎ去っても薄れることはなく。  統治していた国が滅びても変わることが無かった。 (もう私には何もないのだ……)  アレクサンダーは、いざ飛び降りようとしたが、恐ろしくてできなかった。地面に頭を擦りつけ。 (なんと、情けないのだ……)  情けなくて泣いていると、突然、崖から眩い光が溢れだし、美しい天使が現れた。  天使にアレクサンダーが驚いていると、 「あなたの運命は、元々幸福ではないのです」  天使は眩い光の中。どんな楽器にも劣らないほどの素晴らしい声音で話した。 「何故ですか?」  アレクサンダーは不思議と失った声が戻った。 「それは、運命が決めたことです」 「では、運命に会って話したい。運命はどこにいますか?」 「運命は多忙なのですが、特別に私が会えるようにしましょう。ここから、更に西に行ったところの海の見える山頂にいます」  美しい天使が消えると、アレクサンダーは旅に出ることにした。  道中。  また路銀が尽きれば雨乞いの儀式を村々で行い。  所々で食い扶持を稼ぐ生活になった。  数々の山々を踏破し、海の見える山頂につくと、そこには豪奢な宮殿があった。  宮殿の門を叩くと、すぐさま巨大な体躯の運命が現れた。  運命がアレクサンダーを連れ、豪奢な宮殿には似つかわしくない狭い食卓でいそいそとした食事を与えてくれた。  アレクサンダーはひどく疲れているので、運命と寝床につくと、夜中に騒々しい光と共に真新しい紙が降ってきた。  運命は辟易して、 「その紙は明日の仕事だ」 二人は眠った。  次の日。  運命はアレクサンダーを構ってやれずに、紙にそれぞれに適当に運命を書く仕事をし、昨日より一段と狭い食卓で、素早く食事をすると、二人は寝床に着いた。  また、騒々しい光と共に紙が天から降ってきたが、今度のはそれほど多くはなかった。 「その紙は、明日の仕事だ」  次の日は、幾らか時間の余裕のある書類仕事を運命は机でしていた。  運命はアレクサンダーに話しかけた。 「私は忙しいが、まず……お前は何故。生まれた?」 「……わかりません」 「お前の父と母は何故生まれた?」 「……わかりません」
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