血の女王

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アレクは門を開け、ゆっくりと城下町を不安を払拭して歩きだした。 雑多な食材を並べるテントなど、青黒い顔の人びとの間を通り抜けると、遥か遠くの正面に豪奢な赤い城が見えてきた。 血の失せた通行人や家畜は、何かに取り憑かれているかのようで、緩慢な動きでゾンビのように往来していた。 城の中は、使用人や兵士も倒れている。皆、血色の悪い顔で、虚ろな目で宙に視線を泳がしていた。 正面の螺旋階段を駆け抜けると、燭台の明るさで、真っ赤に染まった女王の間が目に入った。 アレクは勇気を振り絞って跪き女王に進言した。 「女王様。もう家畜や人びとの生き血を吸うのを止めて下さい」 「私(わたくし)の名は、エリザベート。そなたの血は煮え滾っておる。落ち着きないな」 次には女王は一変して怒りを表し、 「そなたの望みとやらは、私はどうしても呑めんぞ。下々の庶民や家畜は喜んで私に血を捧ぐのだ。それなのに、そなたはなんと、無礼な。そなたを牢へ入れる。異存はないな」 アレクは血の気の失せた兵士たちに、あっさりと隠しておいた短剣を奪われ、暗闇の牢へと連れられる。 牢の中で、日に日に干からびる生命のアレク。 ある日。 美しい天使と運命が現れた。 「アレク。起きなさい」 美しい天使の声に、薄汚いベッドから青白いアレクが起き上がると、巨大な体躯の運命が頭を下げた。 「すまん。間違えたのだ。てっきりアレクサンダーという名で産まれたのだと思ったのだ」 美しい天使がアレクの頭に手を置いた。 すると、アレクの前世の記憶が蘇った。
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