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「……帰っちゃった。何よ……心配しているって……何なのよ……ふん。あんな事言われたの、久しぶり……だった」
出会って20日程たった際、少女は男の話しを聞いてみる事にした。男以外、彼女を見舞う人はいなかったから。
「やあ。前に比べて元気になったね、調子はどうだい?」
「ねえ」
「うん?」
「おじさんの話し、聞かせてくれない?聖者がやってくるって奴」
「……うんうん、いいともいいとも。どうしたんだい、いつもはちょっとした世間話をしてぼくを追い出すのに」
「別に気まぐれだって」
「わかった、話すよ。なんと、熊本に聖者がやってきているんだ。びっくりしただろ?」
「本当に熊本の為に、来てくれたの?」
「来ないわけないよ」
「どうして?」
「ちっちっちっ。理由なんていらないよ。考えた事もなかった、あ、いや」
「何?」
「助けた後で、後処理どうしようって後悔はしちゃうな。あれだけはどうしても止まらないね」
「死ぬほどどうでもいい」
「重大だろ」
「主に、全体的にきもい」
「子供みたいに無邪気で愛嬌があるって、評判なんだけどな」
「さっさと死んで、それとも私に殺されたい?」
「いんや、もう死んでるから殺されないなー。いやー本当残念だったね、お嬢ちゃん」
「首でも絞めてあげようか」
「残念だ、締める首がないんだ」
「ナイフで刺し殺してあげたら、喜んでくれる?」
「血も出ないし、空を切るだけだよ。体もないんだから」
「毒でも盛ってあげましょうか?」
「毒すら飲みたいよ。また生き直せるんなら」
「水死」
「泳げないから死んじゃうけど、海水を浴びたいよ。塩っ辛い」
これだけも引かないなんて、頭がおかしい人に違いない。とりあえず話しを聞くだけ聞いて、どっかに行ってもらう。
「……はあ。わかった、あなたが言う人達の話しを聞いたら、どっか行ってくれるって約束してくれる?」
「OKさ!約束しなくても、必ず守るさ」
「うざ。意味わからない」
「ばっちりさ。オーケ」
「少し黙れ、おじさんは大人なんだから。こっちの都合考えてよ」
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