聖者が熊本にやって来た

8/9
前へ
/11ページ
次へ
「考えておく。これでメンバーは全員?」 「一部だよ。もっともっと聖者が熊本にやってくるんだよ」 「よくわからないけど、なんだかうきうきしてきた。こんな気持ち久しぶり」 「そうだね、僕らはいわばマーチングバンドだからうきうきしてもらって本望だ」 「バンドなの?」 「ああ。僕のわがままで、行き帰りは同じ曲を演奏するんだ。一部、宗教的だから反感はあったけど」 「おじさん、えらかったのね。何の曲?」 「聖者の行進って曲」 「いいタイトルね」 「ははっ、お嬢ちゃんが元気になって嬉しいよ。今演奏を始めてもいいかな?」 「みんなの迷惑になっちゃうから外でお願い。おじさんごめんなさい」 「ああそう言えばそうだ」 「それに、ここまで言ってもらえたけど簡単にはまだ割り切れない。物語を作ろうって決めたけど、何も見えなくて。一歩先でさえわからない、弱い自分が本当になれるのかって、作家に」 「先なら僕にもわからない。わからないからいいんだろ、先が読める予定調和な演奏なんて白けてしまう。新しい挑戦するから面白んじゃないかお嬢ちゃん」 「チャレンジ……未知……、ねえおじさんはもっとメンバーを呼べるの?」 「できるよ。それがどうしたの?」 「なら子供達を熊本に追加で、連れてきて。これから生まれてくる子達を」 「うん?……あ、あ、あ!!お嬢ちゃんやっぱり君は可愛くて、天才的な発想を持ってる。ああ、必ず連れてくる。そうだ、聖者は聖者だ。生者にはなれない」 「そう。生者は私達だけじゃないの。これからを生きていく、生まれる前の子供達だって熊本にやってきてほしいの。行進を始めたら、誰もが笑顔になれる、絶対!」 「面白い子だ。未来の子供達まで連れてくるなんて、中々思いつかない」 「たぶん、自分に関係してるからだよ」 「それはどういう意味だい?君だって将来があるじゃないか?」 「私の名前、今野(こんの)ミクっていうの」 「ミク、いいじゃないか。日本には漢字っていうのがあるけど、ミクは漢字でなんて書くの?」
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加