転生 22才の記憶

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娘は良き伴侶を得て21才で結婚をしたが式の前日大事な話があると言われ夕食後に聞いた話しは衝撃的であった。 最初に娘は真剣な顔で亡き母の記憶を持って産まれてきたと言った。思わずマジマジと娘の顔を見たが娘は私に構わずに 「お父さんとお母さんの出会いから私が産まれる迄の本来私が知る筈の無い事を話すから黙って聞いて」 そう前置きして娘が語りだした内容に愕然とした。妻との出逢いから初デートの場所、食べた物やファーストキッスの場所に初めて妻と結ばれた場所とその時の話の内容まで決して他人の知ることの無い、況してや産まれてすらいない娘が知る筈の無い事を娘が淡々と話している。 私はさぞかし馬鹿面を晒していたのだろう空いた口が塞がらないとはこの事か、などと考えていたのをおぼえている。 「お父さん今言った事に間違いないでしょ」 と言われて無意識に頷いてしまった。続けて娘は産まれた瞬間からの記憶が有ること目がハッキ見える様になってからの事も覚えているが母親の記憶が蘇りだしたのは三才を過ぎた辺りからだと、そして10才を過ぎた頃にはほぼ全てを思い出したというのか受け継いでいると理解したと言った。 「何故今頃そんな話を」 との問いかけに娘の次の一言は素行能力の限界を越えるものだった、見も知らぬ母親の記憶だけでなく祖母の記憶も持っていると母親の記憶の半分程度だが受け継いでいると言うのだ。 娘は自分と母親と祖母の三人分の記憶を保持していると普通に考えれば分裂症か多重人格を疑う処だが妻との事を聞いた後では信じざるを得なかった。 最後に多分自分は子供を産めば死ぬだろうと自分の記憶を子供に残してそんな予感がすると言ったのを最後に黙って一礼した。 結婚式は恙無く行われ、程なくして娘は子を宿し22才の3日後が出産予定日である。奇しくも妻が亡くなった年齢に子供を産む、それは祖母の亡くなった年齢でもあった。 私には為す術がなかった。唯黙って事の成り行きを見ているしかなく孫が産まれたとき娘は死んだ。 あれから三年後・・・ 孫は三才になった身体には娘と同じ場所に同じ黒子があるし顔付きもソックリである。記憶のことは何も聞かないことにした記憶を受け継いでいて話したければ話すだろうと。 ある日の午後孫を抱いて散歩をしていると 「お爺・・・お父さん」
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