転生 22才の記憶

2/3
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
今日は娘の高校の卒業式だ。娘が産まれたときの事が思い出されてならない。 母子ともに健康で娘が産まれるときも安産で立ち会った医師や看護士も娘が産声をあげたとき妻の心臓が停まった事に気づかなかった。 産まれた子供を母親に抱かせようとして妻が無反応なのに気づいた看護士が医師に声を掛けて分娩室がパニックになった。 病院を挙げての懸命な救命措置の甲斐もなく同じ部屋の中で一つの命の誕生と同時に一つの命が失われた。一時は医療ミスも疑われたが医療現場の監視映像と立ち会った医師や看護士の証言から『心不全』と診断された。心不全=原因不明、世に言う突然死だ。 其れからは怒濤の日々が始まった。娘の誕生を祝う前に妻の葬儀、それと並行して赤ん坊の世話だ、小さい頃は殆どお袋が娘を育てた様なもので父親としてはオロオロしながらオシメ交換や入浴食事の世話と必死で頑張った。 魔のイヤイヤ期も無く三歳を過ぎる頃には殆ど手の掛からないおとなしい子だったが時折見せる仕草や表情が亡き妻とそっくりで胸が締め付けられる想いがした。 その頃二人で風呂に入って娘の身体を洗っていて気づいたのは身体の所々に有る黒子の位置が妻とそっくりなのだ右の鎖骨の所や左耳の後ろそれにお尻に二つ並んだ黒子等記憶にある妻の黒子の位置とまったく同じなのである。 それから顔立ちだ、妻の実家にあるアルバムと見比べて見ると幼い頃の妻と現在の娘の写真を並べるとソックリで知らない人に見せると同一人物の写真と疑わない。妻の両親は孫に会うたびに妻の生まれ変わりだと喜んでいる。 娘の成人式の祝いの席で、手洗いに立ったときに私が居ないので聞こえないと想ったのか、妻の親族が妻の母親も妻を産んだ時に亡くなっていることを話しているのが聴こえた時だった。 調べてみると妻の母親が後妻で妻を産んだ母親は妻を産んで死んだと、娘の母親つまり妻も誕生と同時に母親を喪っていたことになる、これは偶然の一致か 妻方の親族にそれとなく聞いても判らないとか古いことなので記憶に無いとか曖昧な口調で聞き出すことが出来なかった。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!