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その波がついにやって来た。
金が全てと思われた我が国が、友情と筋肉が求められる世の中へと変貌していたのだ。
ちまたには筋肉漫画が溢れ、皆こぞって己のシャツを筋肉で引き裂いた。
男たちはその美しい世界に魅了され、老いも若きも関係なく、己の筋肉を極めんが為に精進する。
学生もサラリーマンも、皆鞄の中にヌンチャクや九節鞭を忍ばせ、己の拳と拳をぶつけ合い、技を競いあった。
そう、それが男の挨拶だったのだ。
“強敵”と書いて“とも”と呼ぶ。
友達100人どころか、1000人に達する猛者もいた。
『男である前に“漢”であれ!』
『さっきまでの“強敵”は、今から“とも”であり、兄弟も同然!契りを結ぶべし』
『裸の付き合いで絆も関係も深めていく、これが“漢”だ』
『己が認めた真の漢には、喜んでその体も魂をも差し出せ』
人々は高らかに拳で天を突き上げ謳い、血と汗を飛び交わせながらも、深く絆を確かめあった。
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