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「やばっ」ってオレは気付いて、スヅの体を押し返してたのとは反対の手で、叫んでいたスヅの口元を覆う。
「んくっ」
けほっ、ごほっ
急だったんで、スヅが咳込んだ。オレは慌てて手を外した。
「なにっ? りょーちんっ?! ご、ごほっ、うっ」
「ごめん、センセ来たわ。静かにし?」
先生が教室に入ってきて、教壇に立ったけど、スヅはむせ返して、けほごほ、咳がとまらん。気管に入ったんやな。
オレは「ごめん」って小さい声で言いながら、スヅに、さっき部活で使ったタオルを渡した。
スヅはそれを目の前の机に敷いて、顔をうずめた。
なかなか、けほごほ止まらん。
「ごめんな」って言いながら、オレはスヅの背中をさすった。顔を覗き込むと、スヅはむせ過ぎで涙ぐんでた。
「けほっ、うう、
・・・なんで、・・・っ、りょーちん、意地悪なん?」
「ごめん。 そんな、咳するって思わんかった。」
「りょーちん、悪人、決定じゃけえな・・・、こほっ」
真っ赤な目で、こっちを睨む。
「涙でるん?」
オレに見られるのが嫌なのか、くるんと顔を背けた。
「ふーーんだっ。・・・こほっ、タオル、臭いんじゃけな?」
「え?! ごめん! おかんのリノア(消臭柔軟剤)も効果ナシか?」
「リノアでも、ダメなんよ?
だって、りょーちん臭なんじゃけな?」
スヅ、踏んたり蹴ったり、カワイソになって、オレはスヅの背中を擦りながら謝った。
そうや。
スヅの背中は、ヤサシく、大切に撫でんとイカンかった。
「ごめん。ごめんな? 涙でるん?」
「クサいけな。」
「ごめんな?」
そしたらスヅは
タオルに顔ぎゅって埋めて、
ゆるしたげる・・・・って、
聴き取れんくらい、ちいさな、ちいさな声で言った。
わかった・・・
わかったんよ、スヅ
今までのは、
オレのズルやったんな?
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