25人が本棚に入れています
本棚に追加
/169ページ
時が流れて、
オレはやっぱり、
あの草原にいた。
“忘れなきゃ
忘れなきゃ・・・”
オレが、そう思う度に
薄い靄(もや)が現れて、
オレの視界をぼんやりさせていったが、
いつしか、それは霧になり、
草原を深く包むようになっていた。
もう、向こう側が見えない。
そんな見渡すことの出来ない草原に
オレは独り、座り込んでいた。
途方もなく草は生い茂ったが、
この草原が、未だ止まらず広がり続けているのはわかっていた。
ーーなぜなら、
まだ、オレは種子を
零し続けていたからだ。
.
最初のコメントを投稿しよう!