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俺の頬を風が撫でていく。
「うはぁ」
蒸し暑い夜中に一人屋根に登り、寝転がって月を眺めている俺。
このジメッとした生暖かい風は何時まで経っても不快でしかない。
だが、あいつも俺と同じ様にこの月を何処かで見ているかもしれない。
その思いだけが俺を此処に縛り付けている。
あれから5年後の今、俺はまだ何も変われていないのだろう。
そう、あれからもう5年も経ったのに、だ。
あいつに言わせれば、まだ5年、なのかもしれないが、待っている俺には、長い長い5年だった。
『休み度に会いに戻ってきてやる。だからお前は此処で待っとけ』
そう言って出て行った癖に、5年が過ぎたと言うのに、全然会いに来やしない。
学校はとっくに卒業しただろうに。
20歳でまだ卒業出来てないとか言ったら笑ってやる。
大事な弟だからな!なんて言っていたのに、首都に行ってしまえば、俺の事など忘れてしまったのだろう。
血なんて繋がりも無いんだし、一時拾っただけのペットの様な存在だったのかも。
それでも、一度くらいは会いに来てくれると思ってたのにな。
もう直ぐ俺は此処を離れる。
その前に会いたかったな。
俺は月を背にして、屋根から降りた。
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