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「おい、お前、大丈夫か?」
空腹で狭い路地の端っこで転がる俺に、声を掛けてきた誰か。
殆ど開かない瞼を無理矢理持ち上げれば、同い年位の金髪に緑色の眼をした綺麗な少年が俺を覗き込んでいた。
大丈夫じゃない、と言いたかったが餓死寸前の俺の口が動く訳も無く。
無言で見つめ合う事になってしまった。
が、目を開けているのも辛いのだから長く続く筈が無い。
直ぐに伏せられた俺の目は、もうボヤけてしまって何も見る事が叶わない状態だった。
そのまま意識も遠くなる。
「おいっ!?ちょっと、寝るな!頑張れよ!親父ーっ!来てくれ!」
少年が大声で叫ぶが、段々とそれも遠くなり聞こえなくなる。
ああ、俺は死ぬんだな。
でも、誰にも知られずに死んでいくと思ったのに、直前に天使が声を掛けてくれた。
俺ってラッキー?
これでもう苦しい思いをせずに済むのと、綺麗な天使に会えた事で、幸せな死を迎える事が出来ると嬉しくなった。
我ながら12歳の考える事じゃ無いよな、と思いながら。
そして世界が真っ暗闇に包まれた。
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