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身体を起こす事も出来ずに、俺は目だけを動かして周囲を探る。
時々、子供は利用価値があるからと、街の子供が拐われる事は有った。
俺は捕まらない様に逃げ回っていたけど。
死にたいとは思ったが、捕まって辛い思いはしたくなかったから。
けれどあの状態なら捕まり放題だ。
瀕死の俺が捕まったなら、何かの実験材料になるんだろう。
痛くて苦しいのは嫌だな。
他の子供が捕まった時に、捕まえに来た大人がヒソヒソと言っていた事。
『まだ子供なのに苦しい思いをして死ぬなんて可哀想にな』
『いや、まだ死ぬとは決まってないだろ』
『そうだな、実験が成功すれば』
『苦しいのには変わりない。それに成功した方が辛い未来が待ってる』
『そうだな。実験材料なんて死んだ方がマシか』
『成功なんてしたら身体を切り刻まれて隅々まで調べられるだろうからな』
『せめて何か美味いものを食わせてやりたいよな』
『んじゃ、運ぶ途中で少し食わせてやろう』
『だな』
彼等は子供を拐いに来た悪い奴等だったが、その会話を思い出した今、思えば優しい人達だったんだろう。
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