朝食にさよならを込めて。

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じりりりり、とつんさぐような目覚まし時計の音はとても苦手なので、いつも僕は意地でも目覚まし時計よりはやく目覚めるようにしている。 「……よし」 春の早朝というのはゆらりと青い。夜の九時に寝て朝の四時には起きて僕は動き出す。場合によっては真夜中の二時三時に起きて動き出すときもある。たいていテスト期間。まぁっくらな窓辺に目をやってから目を覚ますのだ。 春の早朝はゆらりと青い。 昨日の夜半分だけ残した課題を終わらせる。いつものようにスマートフォンにイヤホンをさして、お気に入りの音楽を流す。ぱぱっと課題を済ませて、僕はさらにばたばたと動き出す。 一階の洗面所に行って、まず洗濯機を動かした。こう、男子高校生に下着まで洗わせる姉はいったいなんなんだ、とよく思うけど逆らえない。僕はおとうとなのである。かなしいまでに、おとうとなのである。姉という生物に逆らえるはずがない。今日も今日とて黙って洗濯機を回す。 台所で今日の朝ごはんを考える。ゆらりと青いあの空気はもう消えてしまっている。自分だけが知っているような、自分だけが息をしているような、そんな青い空気は洗濯機の中に放り込んでぐるぐると回っている。漂白剤でもう真っ白だろう。 今日はオムレツにしよう、と決める。
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