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「もっと笑った方がええと思う」
「楽しきゃ俺だって笑いますよ。ただ、別に楽しくないのに笑う必要せいねぇし」
「まあ、そやな。それにしてもなかなか珍しいことしとるんやな。妹の旦那と暮らすなんて奇妙やで」
「俺もそう思います。でもあの男は生活能力が人一倍欠けてるんで、誰かが世話しねぇとダメなんですよ」
そうだ、アイツはああ見えて茶すら沸かせねぇような男だ。勉強ばっかしてたんだろうな、恐らく。
「別に自分じゃなくてもよかったんやないんか?」
「色々あるんですよ。社長には分からない事情がね」
「それ気になるわ~」
「残念ですが、時間切れですよ」
俺は煙草を消して立ち上がる。
「社長、こんなところで何をしてらっしゃるんですか?」
「ありゃ、志麻くん」
「さっさと戻りますよ。今日中にやらねばならないことが山積みなんです。貴方に一服する時間なんてありません」
喫煙所に仁王立ちで現れたのは社長の秘書の倉世志麻。四六時中社長の隣にいる腕利き秘書だとのウワサ。
「篠宮さん、このバカがご迷惑おかけしました。それではこれにて失礼致します」
頭を下げると社長を引っ張って喫煙所を去っていった。
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