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「いちいち謝んなよ、うぜぇ」
『…はい、』
あーやべぇ。
ついつい言葉が荒くなってしまう。眼鏡のシュンとした声で我に帰る。
「とにかく俺が迎えに行くから心配すんな」
『…ありがとうございます。よろしくお願いします』
「ん」
通話を切ると思わず「はぁ…」と溜め息がもれた。すると嫌な視線を感じて目線を上げると喫煙所の外から見つめる視線が。
ニヤニヤと気味が悪い。
「おっ、なんや終わったんか?」
「なんなんすか、人の電話を盗み聞きするなんてタチが悪い」
「自分が喫煙所なんぞで電話しとるからやろ?」
一番聞かれたくなかった相手だ。
最近暑いせいか短パン姿が板に付いて来たこの会社の社長、瀬戸康史だ。先ほどの会議にも参加するようなラフな男。
「ものスッゴ気になる内容やったんやけど、触れていい?あかんことはないやろ?」
「社長に言うようなたいした話じゃないですよ」
「ええんや!聞いたるから話せ!」
社長も煙草に火をつける。
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