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『一生のお願い聞いてくんない?』
『は?…意味、わかんねぇ』
『たまには、妹のお願い聞いてよ』
『……で、そのお願いってのは?』
『おっ、今日はすんなり受け入れてくれんだ。やっさしー』
『茶化すな』
コイツの一生のお願いを聞くのは何度目だったか。
千晃はゆっくりと目を瞑り、口をゆっくりと開く。
『あのバカが、もしも兄貴を頼るようなことあったら…手を差し伸べてやってほしい』
『…眼鏡のことか?』
『そうそう、あの駄眼鏡!アイツアタシがいないと全然ダメでさぁ~ほっとけないんだわ。それに奈々はまだ小さいから、やっぱさ…あーだめだなぁ』
『千晃…』
真っ白な細すぎる腕で目元を隠す。それが一層心の奥にある不安を駆り立てる。
『こんな弱いこと言うの最後にするからさぁ…兄貴、晴彦のこと気にかけてやってほしい。見捨てないであげて…』
これはなんといえばいいんだろうか。この感情をどう言葉にすればいいのだろうか。
『それがアタシのお願い。あのバカのこと頼んだ!』
泣きながら笑ってやがる。
『分かったよ。だから、諦めんな。生きることを諦めたりすんな』
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