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「美香。
ごめんね。最後まで隣にいれなくて──。」
響く銃声。
弾ける体躯。
溢れる命。
実に“八度目”の友の死であった。
「──なぜ、何故変わらぬ。何故繰り返す。
何度戻ればいい。教えてくれ友よ───。」
腕の中で死に逝く友を見つめながら、そう呟く。
瞳を閉じその瞼に映るものは三国志と共に過ごす夢ではなく、命を摘まれ深紅に染まる現実。
その瞼に映るはずだった現実を悉く塗り替えたのは近藤。ではなく、その仲間達であった。
土方、天草、沖田、セス。
最悪の未来を防ぐために、ある程度の命力を残して戦っていた、が。
私はおろか、三国志にさえレベルが届かぬ脆弱な奴等が何故立ち向かえる──。何故阻める──。
特にあの男。
“柳生十兵衛”。
繰り返した八度の内、三度も私の命を奪った“鬼神”。
対価として支払った記憶は黒く塗り潰され、心の奥に秘めた過去さえ思い出すことが出来なくなっていた。
「次で最後か。」
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