巡る世界

5/8
前へ
/8ページ
次へ
「美香。 ごめんね。最後まで隣にいれなくて──。」 響く銃声。 弾ける体躯。 溢れる命。 実に“八度目”の友の死であった。 「──なぜ、何故変わらぬ。何故繰り返す。 何度戻ればいい。教えてくれ友よ───。」 腕の中で死に逝く友を見つめながら、そう呟く。 瞳を閉じその瞼に映るものは三国志と共に過ごす夢ではなく、命を摘まれ深紅に染まる現実。 その瞼に映るはずだった現実を悉く塗り替えたのは近藤。ではなく、その仲間達であった。 土方、天草、沖田、セス。 最悪の未来を防ぐために、ある程度の命力を残して戦っていた、が。 私はおろか、三国志にさえレベルが届かぬ脆弱な奴等が何故立ち向かえる──。何故阻める──。 特にあの男。 “柳生十兵衛”。 繰り返した八度の内、三度も私の命を奪った“鬼神”。 対価として支払った記憶は黒く塗り潰され、心の奥に秘めた過去さえ思い出すことが出来なくなっていた。 「次で最後か。」
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加