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燐翔は思考を巡らせる。だが今、目の前で目を開きこちらを見ている男子生徒の事は全く思い出せない。
(もしかして人違いか?)
「あの~、もしかして誰かと間違えてない?」
「そんなはずは、だって君」
「おい、お前らそういう話はHRが終わってからにしてくれないか?」
燐翔の問いかけに慌てて否定しようとした男子生徒の言葉を田中が遮る。
クラスがまた静かになり、燐翔と男子生徒は席に座った。そして、田中が何事も無かったかの様に話し始める。
面倒な始業式も終わり足早に教室を出て帰ろうとした時
「幸代燐翔くん、少し付き合ってくれないか?」
あの時の男子生徒が声をかけてきた。
「あ~、僕急いでるからゴメン」
早く立ち去ろうと適当に流す言葉を投げかける。
「相変わらず面倒な事は嫌いかい?」
男子生徒の言葉に燐翔は眉をひそめる。
「もしかして本当に憶えてないの?」
悲しそうな声で質問をする男子生徒はため息をすると手を額に当てて話し始める。
「俺は名島 蘭季(なじま らき)、植物の蘭に季節の季で蘭季」
「らき、蘭、季?」
燐翔が首をかしげる。
「まだダメか…、えっと、実は俺、親が離婚しててさ旧姓が白川(しらかわ)なんだよ」
「白川、蘭季…、あっ!」
「やっと思い出したか?」
蘭季は呆れた声で燐翔に話しかける。
「蘭ちゃん!」
「馬鹿!その名を呼ぶな!」
大声で昔のあだ名を呼ばれたせいか蘭季は耳まで真っ赤にして燐翔の口を塞ぐ。
「うぐっ、ゴメンって」
「燐翔、絶対学校ではその名前呼ぶなよ」
まだ、少し頬が赤く染まったままで恥ずかしそうに話す蘭季を見て燐翔が
にっこりと笑う。
「分かった、気を付ける。ところで蘭ちゃん」
「言ったそばから、君って人は…、で何?」
「久しぶりの再会で積もる話もあるだろうし一緒に帰ろう?」
また、にっこりと笑う燐翔に蘭季はため息をつき歩き始める。
「一緒に帰るのはいいけど、何も奢らないからな」
燐翔がバレてたかと言わんばかりにはにかみ、蘭季の隣へ駆け寄って行く。
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