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「いつもお世話になってる気持ちだからいいのよ。それに美里(みさと)さんが、今年はきゅうりが病気でダメになったって言ってたから喜ばれるでしょ」
美里さんというのは正人の母親のことだ。昔は良い所のお嬢さんだったという人で、おっとりと品があり、千夏にはいつも優しい。気さくだが少しきついところのある母とは対照的だ。あの人が喜ぶならいいか、と千夏は笊を受け取った。
「迷惑にならないようにするのよ」
そう言葉をかけると、母はまた夏野菜の収穫に戻ってしまった。パチンと金バサミの音がして、土に汚れた手の中にオクラが一つ転がる。
(迷惑って……あたしの方が遊んでやってるのに)
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