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「お忙しいところすみません。正人君いますか?少し勉強を見てもらいたくて」
母はいつまでも子供のような格好の千夏を心配しているが、別に他のところまで幼子のようなわけではない。千夏にも年相応の丁寧な口は訊けるのである。
「正人?いるわよ。今日は部活も休みで暇そうにしてるから、野菜を洗うの手伝ってもらってたの」
「休み?今日一日ですか?」
「そうよ。どうかした?」
「いえ。何でも。……じゃあ、ちょうどよかったかな?母がこれを美里さんにって」
笊に入った野菜を見せると、美里は嬉しそうに笑った。
「あら~おいしそう。いつも悪いわ~。規子(のりこ)さんに私が感謝してたって伝えておいてね」
規子というのは千夏の母のことである。千夏は首を縦に振って頷いた。
「あの、それで正人君なんですけど……」
「ああ、そうだったわね。ちょっと待っててね」
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