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 左胸のポンプへUSBを挿す。そう考えてみる。人間記憶調整プログラム起動。コマンド、デリート。デリート。デリート。ポケットの中で傷だらけの古いUSBを握りしめた。 デリート。何度繰り返しただろう。何度想ってくれて、何度あっけなくなかったことになったんだろう。 コマンド、デリート。こんなことなら彼女だけ不気味なままでいてくれたらよかった。苦さが喉を転がり落ちる。 「……誰か、助けてよ」 「はい? 私という友だちを前に誰かってなんですか誰かって」 「――こらお前ら遅刻だぞ!」 「うっわ」 「ごめんなさい!」 「聞こえたぞお前上司にむかってうわって言ったな!」 「やだなぁ言ってませんよ」  紅茶と友人関係には砂糖を入れすぎないことがかんじんだ。 END.
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