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お腹をさすって、ゆっくりと歩く翔太に合わせて移動していたら、たこ焼き屋が見えた。
「お、『このタコが中に入っています』だってよ。めちゃくちゃデカいタコじゃねぇか。ここに決まりだな」
透明なケースに、タコのぶつ切りが入った、見た目にもインパクトのあるたこ焼き屋さん。
直径3センチクラスのタコのぶつ切りが入っていて、これがたこ焼きの中に入っているのかと想像すると、食べてみたくもなる。
翔太には……かなりきつそうだけど。
と、そんな事を考えていた時だった。
「ちょっとちょっと!おっさん何してんのよ!『このタコが中に入っています』って書いてあるのに!こんなのインチキじゃない!」
聞いた事のある声が、そのたこ焼き屋から聞こえて来たのだ。
「お嬢ちゃん、どこがインチキなんだ?このたこ焼きの中には、間違いなくこのタコが入ってるんだぜ?いちゃもんを付けるなよ」
目付きの鋭い、角刈りのおじさんが、客の女の子を睨みながらたこ焼きを作っている。
「ん?あれは……留美子じゃねぇか。あのバカ、なに大声で騒いでんだよ」
高広が言うように、お店の人と言い合っている客の後ろ姿は……同じクラスの柊留美子に間違いなかった。
なんでもズケズケと言う女の子だけど、まさかこんな所でも文句を言ってるなんて。
どこか、高広と似てる部分があるよね。
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