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「留美子、なに大声張り上げてんだよ。たこ焼きくらい黙って買えねえのかお前は」
そんな口論の中に、呆れた様子で高広が入って行った。
「はれ?柊さんだ。なんであんなに怒ってるの?たこ焼きの中にタコが入ってなかったとか?」
クレープを頬張り、幸せそうな表情で、殺伐とした雰囲気を醸し出しているたこ焼き屋を理恵も見る。
翔太は……そんなトラブルには無関心なようで、お腹をさすって空を見上げて苦しそうにしていた。
「た、高広!と……明日香に理恵に翔太?何?あんたらダブルデートでもしてんの?」
「なわけあるか!祭りに来てたらこいつらもいてよ、一緒に行動してるだけだ。それよりお前、なに騒いでんだよ」
ホットパンツにTシャツというラフな格好の留美子。
高広とは気が合うのか、高校に入学してすぐに仲良くなった女の子。
私はあまり接点がないけど、たまに話はするし、仲が悪いってわけじゃない程度。
「あ、そうだ!ちょっと聞いてよ!このおっさん、ケースからタコを出してさ、四つに切って生地の中に入れてんの!イカサマでしょ!」
……このタコが本当に入ってると私も思っただけに、これは留美子をバカに出来ない。
それを聞いて、慌てて高広もケースから取り出されたタコの行方を見ていたけど……留美子の言う通り、まな板の上でタコは四等分されて、別の容器に入れられていた。
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