夏祭り

35/45
前へ
/141ページ
次へ
クラスではあまり目立つ事のない大人しい存在で、休み時間になると友達とゲームの話をしてたり、ゲームをしていたり……。 どうしよう、ゲームの印象しかない。 そんな健司だから、金魚すくいが得意でもそれほど私は驚かないけど、高広達は違うみたいだ。 「す、すげえ……どうなってやがんだ、あの手首の動きはよ。あんな機械的に動くもんなのか?」 「水の抵抗を最小限に抑え、かつ金魚の動きを先読みしてポイを動かしている……気付いた時には、金魚はお椀の中ってわけか」 男子って、こんな事でも素直に感動出来るんだね。 そりゃあ、私だって健司は凄いって思うけどさ、そこまで分析して感動はしないかな。 「はっ!高広!ポイが裏表逆だ!それじゃあ水の抵抗を大きく受けてしまうぞ!」 「あぁ!?これに裏表なんてあるのかよ!」 健司と違って、こっちはパニックになってる。 別に勝負をしているわけじゃないのに、なんで対抗意識を燃やしてるんだろう。 「そこからわかっていなかったなんてな。金魚すくいをなめてもらっちゃ困る!」 学校では、ゲームの話をしない時は無口なのに、自分の得意な事では饒舌になるのかな。 自信に満ち溢れた健司のポイの上には、出目金が乗っていた。
/141ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1518人が本棚に入れています
本棚に追加